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皇帝たちの中国
« 投稿日:: 6月 06, 2014, 08:37:29 pm »
書名:皇帝たちの中国
著者:岡田 英弘
発行所:原書房
発行年月日:1998/11/21
ページ:262頁
定価:1800円+税

「国家」、「国民」という概念はフランス革命、アメリカの独立戦争後できた言葉、それ以前の世界にはなかった。たかだか200年の歴史しかない。19世紀に世界に広まった概念だ。人類の長い歴史からすればつい最近のこと。中国の歴史を理解するには「国家」「国民」という概念ほど邪魔なものはない。中国にはまず「皇帝」がおり、皇帝が事業を営む、その範囲が天下であった。面としての土地、住民を支配していた訳ではない。商社の営業支店が都市であり、その支店長が税を徴収する。その税は皇帝の財産となる。したがって戦争の費用は皇帝が支出する。皇帝に雇われた軍隊が戦う。言い方を変えればやくざ社会の縄張り、みかじめ料のような仕組み。

国民があり、国民が集まって国家という近代の概念は全くなかった。それなのに中国、その他歴史を考えるとき何故か、この国家概念を暗黙の内に抱いてしまっている。中国人という国民が中国という国を
中国を構成していたわけではない。この本は中国史上有名な5名の皇帝の人物像を中心に詳細に紹介した岡田史観による中国の歴史です。前漢の武帝、唐の太宗李世民、元の世祖フビライ・ハーン、明の太祖洪武帝朱元璋、清の聖祖康煕帝の事跡ではなく、人間を描いています。

ここで面白いのはどの皇帝もただ強かっただけではなく、正統な皇帝ということに拘っている。またチンギス・ハーンの大元(モンゴル帝国)の属国としての元の時代から中国は性格が変わってきた。モンゴル帝国は東は朝鮮(高麗国)、中国、チベット、雲南、インド、ロシア、オスマン帝国など中央アジアの国々の祖ともなる強大な影響力をもっていた。その一つとしてフビライ・ハーンの政治、またモンゴル帝国は有力な遊牧民の部族達によってハーンが選ばれた。ローマ帝国でも元老院によって選ばれたものが皇帝になっている。岡田史観はモンゴル帝国から世界史が始まった。中東の問題、セルビアの問題、ウクライナの問題などなど現代でいろいろな紛争などもこのモンゴル帝国の歴史を紐解くことで見えてくるものが多い。モンゴル帝国が影響を持ちすぎていたから、大航海時代が始まった。中央アジアの草原の道はスペイン、ポルトガル、イギリス、オランダなどは通れなかった。仕方がないので航海に困難な海を選んだ。陸のシルクロードはずっと以前からあった。でも通ることが出来なかった。

世の世界史の本はつまらない、退屈なものですが、この本は全く違う。著者も前書きで云っているように読んで面白い、興味を持てる歴史を書いている。今までの常識を変える視点が一杯、なかなか面白いしかしユニークすぎる故に古く堅い東洋史学会、世界史学会から無視されてきたのだろうと思う。岡田史観を評価することが自分たちの存在を否定するところまでいくと身構えているのかもしれない。でも素直に読んで学問、歴史の発展に寄与する道はいくらでもあったと思うが、何故か?奥田史観は否定、無視されてきた。でもこの本は良書です。

日本も同じように「国家」という概念は明治以降、お国のためと言ったのはお国(ふるさと、故郷、地元)のこと。日本国という国家は明治以後の概念、そして国民によって作られた国になっているのか?怪しいものがある。何処で国民があって国があるとハッキリ言えるのか?少々難しいところがあるように思う。国家とは何か?今ほど考えないといけないといけない