投稿者 スレッド: 福沢諭吉は謎だらけ。心訓小説  (参照数 742 回)

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福沢諭吉は謎だらけ。心訓小説
« 投稿日:: 5月 10, 2014, 11:02:39 pm »
書名:福沢諭吉は謎だらけ。心訓小説
著者:清水 義範
編集:小学館
発行年月日:2006/10/10
ページ:254頁
定価:1600円+税

福沢諭吉の福澤心訓七則と呼ばれる処世訓がある。しかし作者は福沢諭吉ではないと福沢諭吉全集にも記載してあり、偽作ということが確定している。でも何故か福澤心訓七則として九州の土産物をはじめ、世間に広く知れ渡っている。福沢諭吉の作として信じられている。
その福澤心訓七則にスポットを当てて、その謎に迫る。文学探偵と題して清水義範が綴った本です。
子供、妻を大切にした福沢諭吉は子供達に「おさだめ」という処世訓を書き残している。それも子供の成長に合わせて、次々書き増している。その処世訓と「諭吉心訓」七か条を比べて、まず「諭吉心訓」は言葉遣いが明治の頃とは違ってかなり新しい。ここをてこに偽作者を推定して行く過程が綴られている。
『学問のすゝめ』『ひびのおしえ』『福翁百話』などを読み解きながら探検を続けていく。福沢諭吉という偉人は調べれば調べるほど謎が一杯の人。また彼の著書されているものの中にも福沢が書いたと言い切れないものも混じっている。この本の2年前に書かれた『漱石先生大いに悩む』という作品もあるらしい。福澤心訓七則以外のいろいろな人生訓、教訓、処世訓(「親父の小言」「つもり違いの十箇条」「ぼけ予防の10ヶ条」「健康十訓」「七つのシン」「運について」「水五訓」「心戒十訓」「ならぬもの十訓」「日常の五心」「伊達政宗五常訓」)などを例にいろいろと世間の思いなども分析している。上記の処世訓はインターネットで検索すれば出てきます。なかなか面白い本です。

本書より
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福澤心訓七則
    一、世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つという事です。
    一、世の中で一番みじめな事は、人間として教養のない事です。
    一、世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。
    一、世の中で一番みにくい事は、他人の生活をうらやむ事です。
    一、世の中で一番尊い事は、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です。
    一、世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です。
    一、世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。

おさだめ
    一、うそをつくべからず。
    一、ものをひらふべからず。
    一、父母(ちゝはゝ)にきかずしてものをもらふべからず。
    一、ごうじやうをはるべからず。
    一、兄弟けんくわかたくむよふ。
    一、人のうはさかたく無用。
    一、ひとのものをうらやむべからず


富田正文、『福澤諭吉全集』第20巻(附録)、p.10
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福澤心訓七則は僞作である

 三、四年前からときどき「福澤諭吉心訓七則」というものに就いて、あれは全集のどこに出ているかと尋ねられることがある。初めは何のことかわからなかったが、まもなくその印刷物を見せられた。
 「一、世の中で一番樂しく立派なことは一生涯を貫く仕事をもつことである」以下箇條書きにして七條ある。初めは「福澤諭吉訓」といっていたが、だんだんに「福澤諭吉心訓七則」という標題ができあがったようで、ちかごろは方々でその印刷物を見るようになった。
 書いてある七條はいずれも立派な訓えで誠に恥ずかしからぬ文言であるが、文體は明らかに現代文で、福澤の明治時代の文章とはハッキリ違っている。もちろん、福澤の書いたものではないし、福澤の文章の中から拾い出したという形跡も見當らない。誰かの創作であろうが、惜しいことにその作者は自分の名の代りに福澤諭吉の名を借りて來たばかりに、自分の創作した訓えの一つにそむく結果となってしまった。その訓えとは「一、世の中で一番悲しいことは嘘をつくことである」!!