投稿者 スレッド: 都市膨張 「市長への手紙」は訴える  (参照数 352 回)

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都市膨張 「市長への手紙」は訴える
« 投稿日:: 5月 09, 2014, 07:49:45 pm »
書名:都市膨張 「市長への手紙」は訴える
著者:小林 伸男
編集:横浜市広報相談部広報課
発行所:横浜市
発行年月日:1985/9/20
ページ:254頁
定価:1200円+税

横浜市の「市長への手紙」は昭和38年11月、全国に先駆けて実施された。この本は昭和60年になって22年間で16万通24万件の膨大な情報を整理して、その中から直接取材して話を聞いた記録です。当時細郷市長の時代。横浜は関東大震災、経済恐慌、横浜大空襲、米軍接収、人口急増の五重苦。下水道、河川、道路の遅れなど問題山積みの中をどう市政を運営してきたか?行政の良いことばかりではなく、悪いことも、反省すべき事も綴っている。「緑区東京都民」と言われるように東京の膨張によって、意図するしないに関わらず、横浜市はどんどんと膨張して、宅地、道路、下水道、幼稚園、小学校、中学校が足らない。民間デベロッパーの宅地開発だけにしてしまうと公共用地、公園、緑、ゴミ置き場など公共部分が確保できない。人口増に対して公的施設は市役所の仕事。そんな中、市役所の各担当者がそれぞれ知恵を出しながら乗り切って、漸く一息ついたところが昭和60年頃だと言っている。

田園都市線沿線の緑区北部(現青葉区)の東急による開発、京急沿線の開発などに危機感をもって、土地利用に対する指導、通達(法的根拠はない)などで事業者側に理解して貰うというお金も出さないお願いだけで職員は交渉を続けている。横浜市を良い街にすること。これしかない。
先人達の思い、努力、大激論など生々しく記述している。港北ニュータウンの開発、みなとみらい21の開発、戸塚駅の再開発(実は昭和38年頃から再開発の話は持ちかけていた。地主と借地人との比率が50%ということで借地人の反対で実行できなかった)昭和60年時点で戸塚区の分区で地元の反対、再開発問題が漸く落ち着いてきたとのこと。20年30年先に漸く実現できることに粘り強く取り組んでいる職員達の姿が描かれている。

26年前の横浜を思い浮かべながら読んでみると、具体的な場所、事件などが浮かんでくる。「緑区東京都民」だった。寝るために帰るだけの横浜だった。殆ど知らなかった。この本で納得出来ることイベントなども多い。林市長に代わって「市長への手紙」はなくなったが、この本を読み直して先人の市民と役所のコミュニケーションの取り方をどう行っていたか?またこの企画のように手紙を出した本人に接触して、文章だけでは判らない微妙な本人の思い、提案を聞くこと。今は出来なくても将来の課題として頭の隅に寝かせておくことも必要ではないかと思う。良い街は一朝一夕に作れない。市民だけ、役所だけでは出来ない。そして気長に続けていくことに意味がある。

図書館で何気なく拾った本(リユースの棚から)です。たまにはこんな良い拾いものがあるのですね。