書名:花鳥の夢
著者:山本 謙一
発行所:文藝春秋
発行年月日:2013/4/25
ページ483頁
定価:1900円+税
「洛中洛外図」「四季花鳥図」「檜図」などを描いた天才絵師・狩野永徳の生涯を描いてる。狩野派という巨大な絵師集団を率い、狩野派でも特別な才能に恵まれ創作への意欲、棟梁として求められる器量の狭間に揺れながら、最大のライバル長谷川等伯への嫉妬、一途に画境の極みを目指す。絵師の業、その業に生きた狩野永徳を力強いタッチで描いている。
狩野永徳の絵は緻密で隙がなく、作者の執念、情熱が画面一杯に広がる。目をそらして見ることが難しいくらい迫ってくる。それに比べて長谷川等伯は同じように緻密で繊細な絵を描くが、どこか見る人の位置が残してある安心感がある。いずれ劣らない天才絵師、その長谷川等伯が全編の中で、重要な部分でそっと顔を出す。しかしその出現によって永徳の絵の質も変わってくる。信長、秀吉の時代狩野派が一手にふすま絵などを引き受けていた。土佐派も消滅しかかっていた。長谷川等伯も小規模集団。
戦乱の京都の公家屋敷、御所、寺院などのふすま絵の多くを手がけている。また安土城のふすま絵、大坂城のふすま絵、いままで残ったものもあるが、多くの作品が灰と消えた。そんなときの永徳の心中も良く描けている。是非薦めたい本の一冊です。これからの山本謙一は楽しみです。
『花鳥の夢』 (山本兼一 著) | インタビュー - 本の話WEB
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