投稿者 スレッド: 隠される原子力 核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ  (参照数 300 回)

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書名:隠される原子力 核の真実
   原子力の専門家が原発に反対するわけ
著者:小出 裕章
発行所:創史社
発行年月日:2010/12/12
ページ:157頁
定価:1400円+税

この本は3.11以前に出版されている。福島第一原発事故ではじめて知った人も多いと思うが、その後良識ある人はこの本に書いてあることを言っていた。この本は原子力のバイブルとも言える本だと思う。まずこの本に書いてあることを基本に、それぞれの説を比較してみると見えてくるものがあると思う。
・原子力発電所は「水暖め装置」、300万KW消費して100万KWを電気に、200万KWを熱に70トン/秒を7℃暖める
・原子力発電がなくても電気は足りている。原子力発電所を作ったものだから使わざるを得なかった。
・電気の負荷変動に対応できない原子力発電所、したがって火力発電所で負荷変動に対応せざるを得ない
・石炭、石油に比べて圧倒的に少ないウラン
・石油の寿命はどんどん延びてきた。今43年、2050年になっても40年だろう
・原子力発電所はCO2削減効果はない。発電時はCO2は発生しない。
・原子力発電は安くない
・電気の使用量の37%が国民、その他は企業等、利益はこの37%を上げているのが電力会社

小出裕章は日本の反原発の科学技術者として、最も良心的でラディカルだろうといわれている。京都大学原子炉実験所の助教だが、1949年生まれで実績も十分なのに助教のままである。京大原子炉実験所は大阪府泉南の熊取町にある。そこで「熊取六人組」と呼ばれていた人たちがいた。この6人組が仲間なのだ。海老沢徹・小林圭二・川野眞治・今中哲二・瀬尾健(故人)。いずれも筋金入りの反原発派の面々だ。反原発派はみんな似たような境遇に置れている。今は今中哲二と著者は現役。京大原子炉実験所には何故こんな反原発の人々が棲息できたのだろうか?東大にはひとりもいないと言われている。原発廃絶のために原子炉研究を続けているのは京大だけなのだ。

原発事故が起こった時、毎日放送のラジオ番組「種まきジャーナル」で毎日電話出演して、東京電力発表、NHKの解説委員、政府発表に異を唱えて、著者は自分の知る限り、原発の事故の解説を判ることは判ること、判らないことは判らないと良心的に権威にも押されず、原発マフィアを恐れず、発言していた。それは段々ネット、口コミ、講演会などで広まってきた。未だにNHKなどは取材もしていない。たまに「そもそも総研」の玉川徹が取り上げているくらい。でも実際の事故の様子を見ていくと小出裕章が述べていたことが本当だったということが判ってきた。メルトダウンもそうだし、汚染水問題にしても事故直後から応急処置「タンカーを持ってこい」と。また地下ダムを作らないといけない。ぶれの少ない発言も好感が持てた。でもこの番組も1年半で番組編成替えでなくなった。(スポンサー関西電力の毎日放送への圧力があったとも)日本にもこんな人がいたのだと安心した一人です。3.11以降確か3.14頃この「種まきジャーナル」で知った。

小出裕章は好んでマハトマ・ガンジーの墓碑に記されている「七つの大罪」を引く。
「理念なき政治」「労働なき富」「良心なき快楽」「人格なき知識」「道徳なき商業」、そして「人間性なき科学」「献身なき崇拝」である。また尊敬する人物として足利銅山公害事件の田中正造を上げる。
原子力発電所、放射能、被曝、再処理、核廃棄物などについて非常にわかりやすく書かれている。また読みやすい。珠玉の言葉が157ページという短い文章の中に散りばめられている。読んでみる価値のある本だと思う。

本書より
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 夢に燃えて東北大学工学部原子核工学科に入学した私は、原子力を学び始めてすぐに、その選択が間違っていたことを知りました。なぜ電気を使う都会に原子力発電所を建てないのか。……その答えはとても単純なものでした。原子力発電所は都会では引き受けられない危険を抱えたものだからでした。
1970年10月に女川町で開かれた原発反対集会に参加し、それ以降私は、反原発の道を歩き始めました。私は1974年から「京都大学原子炉実験所」で放射能測定を専門として研究していますが、原子力研究の世界に住みながら、なぜ原子力に反対し続けるのか、そのことをこの本に記します

【本文のもくじ】
1章 被曝の影響と恐ろしさ
2章 核の本質は環境破壊と生命の危険
3章 原子力とプルトニウムにかけた夢
4章 日本が進める核開発
5章 原子力発電自体の危険さ
6章 歪められた二酸化炭素温暖化説
7章 死の灰を生み続ける原発は最悪
8章 温暖化と二酸化炭素の因果関係
9章 原子力からは簡単に足を洗える
10章 不公正な世界
11章 再処理工場が抱える膨大な危険
12章 エネルギーと不公平社会