選挙がないからやりたい放題 年の瀬のドサクサに大臣更迭の姑息|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/316592「任命責任を重く受け止めている。山積する課題に取り組み、職責を果たしていきたい」
内閣改造から4カ月半で4閣僚の交代という前代未聞の「異常事態」。岸田首相が27日、国会閉会中の年末という異例のタイミングでの秋葉復興相の「更迭」を決断した。
後任には安倍内閣で復興相を務めた渡辺博道衆院議員を充てる。
秋葉は衆院当選7回。2021年の前回衆院選に宮城2区から出馬して落選し、比例代表東北ブロックで復活当選した。
8月の内閣改造で復興相に就任したばかりで、4カ月半の在任期間は2012年2月の復興庁発足以降、最も短命の大臣となった。
「(人事は)最終的に首相が決めることだが、私自身に関することは何一つ法令に違反することはなかった」
秋葉は27日の午前中の記者会見で、こう強がっていたが、何をかいわんや。先の臨時国会で、野党から親族に政治資金を還流させていた疑いや、秘書が前回衆院選で選挙運動の報酬を受け取っていた問題を指摘されたのを忘れたのか。潔白というのであれば、自身で会見を開いて徹底的に説明すればよかったのに何もせず、ノラリクラリ。議員辞職してもおかしくない重大疑惑に頬かむりして平気の平左で大臣のイスに居座り続けた挙げ句、今もなお開き直りとも受け取れる発言をしているから呆れてしまう。
<「政治とカネ」を巡る疑惑で追及を受ける秋葉氏を抱えたまま、来年1月召集の通常国会を乗り切るのは困難と判断した>
<国会閉会中の交代を決めたのは予算編成や政権へのダメージを少しでも小さくするため>
<来年1月召集の通常国会前に火種を取り除き、閣僚3人の更迭に追い込まれた秋の臨時国会の二の舞いを避けるのが狙い>
新聞各紙は「秋葉更迭」に踏み切った岸田の狙いについて、総じて通常国会を乗り切るため、などとシタリ顔で“解説”しているのだが、それはつまり、企業や学校が年末年始の休みに入り、新年を迎えるこのタイミングであれば国民はすぐ忘れるだろう--とタカをくくっているわけで、これほど国民を愚弄した話はないだろう。
岸田が総理大臣としての任命責任を重く受け止め、国民生活のために内閣の立て直しが必要と本気で考えるのであれば、もっと早い段階で内閣改造や党役員人事に踏み込む選択肢もあったはず。
だが、そうせず、「秋葉更迭」という対症療法にとどめたのは、自らが矢面に立つことを避けたいから。要するに保身であり、年の瀬のドサクサに大臣更迭という裏には、そんな岸田の姑息なホンネが透けて見えるのだ。
政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう言う。
「秋葉大臣の更迭は通常国会前の既定路線だったとはいえ、岸田首相としてはとにかく小さくまとめたかったのでしょう。ただ、問題を抱える人物はまだおり、火種はくすぶり続けたまま。今回の更迭で一件落着とはいかないでしょう」
「ポン助政権」のやりたい放題を許してはならない
差別主義者(C)日刊ゲンダイ
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山際大志郎前経済再生担当相、葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相……。新聞やテレビは改造後に更迭された閣僚の名前を挙げつつ、岸田が党内融和を重視し、能力よりも当選回数や派閥に配慮した結果、起きた異例事態横横などと報じているが、果たしてそうだろうか。
今夏の参院選の応援演説中に銃撃されて亡くなった安倍元首相はしょっちゅう、「自民党は人材の宝庫」と繰り返していたが、自民党議員といえば、秋葉と一緒に交代させられた杉田総務政務官のような差別的思想の持ち主や、カネにまつわる汚い疑惑が報じられたりする連中ばかり。「人材の宝庫」どころかガラクタの寄せ集めに等しく、政治家としての資質も能力もない。政治評論家だった故・三宅久之氏の言葉を借りれば、岸田も含めてどの議員も「ポン助」だから、誰を閣僚に選んだとしても遅かれ早かれ醜聞が発覚し、辞任、更迭に追い込まれたのではないか。つまり、閣僚4人目の更迭は異例でも何でもなく必然だったと言ってもいいだろう。
許せないのは、そんな支持率が3割台しかない低空飛行の「ポン助政権」が、向こう3年間、大規模な国政選挙がないからと開き直り、やりたい放題やっていることだ。
「聞く力」「あらゆる選択肢を排除しない」「丁寧に説明」などと散々言っておきながら、国会で議論することもせず、唐突に何でも決める。安倍元首相の国葬、敵基地攻撃能力の保有、原発政策……。これまでの国会答弁も議論もすっ飛ばし、勝手に決めて後は野となれ山となれだ。
■ミサイルが飛んでくる前に国民生活が破綻
国民世論の反発が起これば一応、「検証」は口にするものの、形だけ。安倍国葬の検証だって、名ばかり有識者を集めて非公開の議論をさせ、「国民への説明は足りなかったけど、やって良かったね」という結論ありきの茶番劇だった。
安倍銃撃事件のきっかけとなった旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党議員のズブズブ関係の「検証」だってどうなったのか。
全く手つかずの状態で、ちっとも改める姿勢が見えないではないか。結局、選挙に勝つことができれば、相手がカルト教団だろうが、善良な国民から平気で財産を収奪する連中だろうが平気で手を組む。そうして選挙に勝てば「数の力」で何でもやるし、何をやっても許されると勘違いしているのが今の政権、与党なのだ。
「5年で43兆円」というベラボーな防衛費増だって、「増税はいかん」などと声を上げたのも最初だけ。いざ議論が始まったと思いきや、あっという間に一丁上がりで容認だ。民主党政権時代、政策が打ち出されるたびに「財源を示せ」とメディアを従えて大合唱していたクセに、防衛費増については財源の明確な根拠も示されないまま「OK」だからむちゃくちゃだ。
資源高や物価高、子育てなどの支援策そっちのけで「ミサイルだ」「武器だ」なんて北朝鮮と変わらない。一体、どこの誰が日本に攻撃を仕掛けるのか分からないが、これではミサイルが飛んでくるよりも前に、国民生活は「ポン助政権」に破壊されてしまうのではないか。
福田赳夫元首相の秘書で、自民党本部情報局国際部主事を務めた中原義正氏がこう言う。
「もともと総理大臣の器ではなかった男が窮地に立たされて右往左往している。支持率が落ち続ける中、党内の求心力もないため、場当たり的な対応でしのごうとしている姿が透けて見える。その状況にポスト岸田を狙って党内も足の引っ張り合い。誰も国民生活のことを真剣に考えていない。これでは日本は潰れてしまう」
やりたい放題をこれ以上、続けさせたらダメだ。