書名:神奈川県の歴史
著者:神崎 彰利
発行所:山川出版社
発行年月日:1996/12/5
ページ:320頁
定価:1900円+税
神奈川県では石器時代、縄文時代、弥生時代の遺跡は他地域に比べて数多く発掘されている。これは近年の急激な街作りのための工事が行われたためかもしれない。また古墳時代から平安時代にかけて大和の支配力が及ぶようになってから、以前住んでいた人々は何処かに移住したようだ。
鎌倉時代になって地域の豪族など勃興したが、江戸に幕府が開かれるまではやっぱり武蔵野の辺鄙な所が多かった。江戸時代になって新田開発が盛んになっているのも開発するべき土地がいっぱいあったことによるのだろう。神奈川県の国宝は国宝建造物1件(鎌倉円覚寺舎利殿)、国宝美術品17件と数少ない。鎌倉はその後室町、戦国時代、江戸時代と廃墟とかしたところも多かったのではないか?
神奈川県域は地元の人々が増えて発展するよりは他から移って来た人たちによって発展したところが多いので、遺跡、文化、芸術よりは今を生きることを主にしてきたのでは。また余裕のある大金持ちが少なかった。
近世の神奈川県域は、武蔵国橘樹郡・都筑郡・久良岐郡の3郡と、相模国鎌倉郡・三浦郡・津久井郡・高座郡・愛甲郡・大住郡・淘綾郡・足柄上郡・足柄下郡の9郡に分かれていました。大名領は、幕末には、11万3千石の小田原藩、1万3千石の荻野山中藩、1万2千石の金沢藩(六浦藩)を数えるにすぎず、その他は幕府直轄領や旗本の知行地、寺社の御朱印地でした。
これは江戸より10里以内は徳川幕府の幕臣で固めるという方針で大大名がいなかった。また郡、村なども一人の領主が支配するのではなく複数の領主に支配されていた。したがって他の地域のように藩独特の特徴などもなく、神奈川県としての特徴がつかみにくいのかもしれない。
この神奈川の歴史には日本の歴史の中で登場する機会がすくないので、縄文遺跡(花見山遺跡、華蔵台遺跡)、弥生遺跡(大塚遺跡)、鎌倉幕府、横浜開港後などが主にページが割かれている。また江戸時代の村の暮らし、年貢、百姓一揆、村の掟など農民の生活などは詳しいが、ローカルな話が多い。興味のある人にはおもしろかもしれないが、一般的には?逆に江戸時代以降400年位しか資料が残っていないのではないかと思う。神奈川県の概要を掴むのには参考になる本だと思う。