投稿者 スレッド: 天涯の花 小説未生庵一甫  (参照数 657 回)

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天涯の花 小説未生庵一甫
« 投稿日:: 4月 03, 2013, 07:40:59 pm »
書名:天涯の花 小説未生庵一甫
著者:澤田 ふじ子
発行所:中央公論社
発行年月日:1999/4/20
ページ:389頁
定価:1456円+ 税

いままで殆どの人が取り上げなかった華道(生け花)をテーマにした作品を発表している。『空蝉の花』(池坊の異端児、大住院以信)、『花僧』(池坊立花成立に貢献した池坊専応)、そして本書を含めて三作品です。

23歳の沼田内蔵助(後の未生庵(斎)一甫)は、幕臣山村家の妾腹の子として、小普請組支配無役の沼田家に婿養子に入る。無役の舅又左衛門は猟官運動に奔走する。それも娘・蕗(沼田内蔵助の妻)を連れて、上司のところへ外出する。そんなある日、高瀬家を出奔し行方を捜していた親友・高瀬修蔵は遊女・葉と心中する。内蔵助が一人残された修蔵の妹・雪に代わり葬儀の支配を行い。妻蕗と離縁し、一人生け花に生きる覚悟をした矢先、事件が起きる。

幕臣の子に生まれながら武士への執着を捨て、愛への未練を断ち、木曾、尾張、京都、九州、四国、山陰と漂泊の旅の中で、内蔵助(未生庵(斎)一甫)は、多くの人と出会う、自身の花論を作り上げていく。一輪の花に人生を託して、生花“未生流”を興した一甫。華道を行う中で、儒教・老荘思想・仏教の宗教的観念を根本的思想にした。そして、華道をする事によって、自らの心を安定させるというのが理念。華道技法には、直角二等辺三角形の形を象って生け花をするという技法がある。そして、宗教観念を取り入れ、世界を形成する万物である「天地人」を意識した生け花。生け花一筋の道をたどりつづける辛苦にみちた生涯を鮮烈に描く渾身の長篇小説。