南海トラフ地震 地域の危険度に応じた対策を | NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170527/k10010996601000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_004南海トラフ地震 地域の危険度に応じた対策を
5月27日 4時08分
南海トラフで異常な現象が観測され巨大地震の発生が懸念される事態となった場合について、国の検討会は、短時間で津波が到達すると予想されるなど、その地域の危険度に合わせた対応が必要だとする今後の対策の方向性を示しました。
南海トラフの巨大地震の防災対応をめぐっては、6年前の東日本大震災をきっかけに国が想定を見直し、南海トラフ全域を震源域とする対策に切り替えたほか、専門家による検討会で「現在の科学的知見では確度の高い予測は難しい」という見解が示されたことなどから、国は去年、有識者による検討会を設置し議論を進めています。
26日の会合では、南海トラフで異常な現象が観測され、巨大地震の発生が懸念される4つのケースについて、今後の対策の方向性が提示されました。
それによりますと、例えば、地震発生から短時間で津波が到達すると予想される地域ではお年寄りの避難を早めに開始するほか、そのほかの人も夜間は安全な場所に避難しておくなど、地域の危険度や地震の切迫度に応じて対策を準備することが必要だとしています。
検討会では、来年3月末までに報告書をまとめ、今後の対策について国に提言することにしています。
巨大地震 4つのケース
国の検討会で議論されている「巨大地震の発生が懸念される4つのケース」は次のとおりです。
<ケース1>
1つ目のケースは、駿河湾から四国沖にかけての南海トラフの一部がずれ動いて巨大地震が発生し、その後、それとほぼ同じかさらに大きな地震の発生が懸念される場合です。
南海トラフでは、過去にも一部がずれ動いて大きな地震が起きたあと、しばらくして隣接する領域で地震が起きたケースがあり、このうち昭和19年の「昭和東南海地震」が発生した2年後には、その西側で「昭和南海地震」が、1854年には「安政東海地震」が発生した32時間後に、その西側で「安政南海地震」がそれぞれ発生しています。
<ケース2>
2つ目のケースは、南海トラフの震源域で想定より一回り小さいマグニチュード7クラスの地震が発生した場合です。
南海トラフでは、巨大地震の発生前にマグニチュード7クラスの地震が起きた記録はありませんが、6年前に起きた東北の巨大地震では2日前にマグニチュード7.3の大地震が発生しています。
世界全体では1900年以降、マグニチュード7クラスの地震が起きたあと、3年以内にさらに規模の大きな地震が発生したケースは52例あり、このうち、およそ4割にあたる22例は3日以内に発生しています。
<ケース3>
3つ目のケースは、南海トラフ巨大地震の想定震源域で地下水の水位の変化やプレート境界が長期間にわたってゆっくりとずれ動くなど、6年前の東北沖の巨大地震の前に見られたような異常な現象が、複数、観測された場合です。
<ケース4>
4つ目のケースは、東海地震の発生前に起きると考えられている、プレート境界がずれ動く「前兆すべり」のような現象が観測された場合です。
異常現象 どう評価するかなど議論
26日の検討会では、南海トラフで異常な現象が観測された場合に、どう評価するかや、その後、情報をどう発表するかについても意見が交わされました。
駿河湾から四国沖にかけての南海トラフ巨大地震の想定震源域のうち、静岡県の内陸部から遠州灘にかけての東海地震の想定震源域については、地殻変動などに異常が観測された場合、専門家による「判定会」が開かれ、気象庁が東海地震の「予知情報」や「注意情報」を発表する体制がありますが、このほかの領域についてはすぐに活動を評価したり情報を発表したりする特別な仕組みはありません。
これについて委員からは、東海地震の想定震源域以外で異常が観測された場合にも判定会のように速やかに評価する仕組みが必要だという意見が相次ぎました。そのうえで、情報をどう発信するかについては、気象庁が一元的に行うべきではないかといった意見も出されました。
また、東日本大震災以降、確度の高い予測が難しいと指摘されていることを受けて、地震の予知や高い精度の予測を基に住民の避難や安全確保などを進めようという「大震法」に基づく今の仕組みを見直す必要があるという意見や、現段階では気象庁が東海地震の「予知情報」や「注意情報」を発表することは困難ではないかといった意見も出ました。
気象庁の担当者は「現在、東海地震については、ほかの地震とは異なる対応をしているが、南海トラフ全体についても特別な対応が必要だと思うので、今後議論していきたい」と述べました。