投稿者 スレッド: 花神  (参照数 285 回)

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花神
« 投稿日:: 8月 28, 2017, 07:50:52 pm »
書名:花神(上)
著者:司馬 遼太郎
発行所:新潮社
発行年月日:2015/2/5
ページ:472頁
定価:710 円+税

書名:花神(中)
著者:司馬 遼太郎
発行所:新潮社
発行年月日:2003/2/20
ページ:511頁
定価:667
 円+税

書名:花神(下)
著者:司馬 遼太郎
発行所:新潮社
発行年月日:2009/6/30
ページ:553頁
定価:743 円+税

大村益次郎(村田蔵六・良庵)というと靖国神社の大鳥居と神社の間の広場に
銅像があります。東京招魂社(後の靖国神社)を創建を提案した人の一人とし
て大村益次郎がいます。大村は第二次長州征討の少し前、突然、桂小五郎(木
戸孝允の推薦で)長州藩に士分待遇(碌はわずか)で召し抱えられて、長州征
討で長州藩兵を指揮し、勝利の立役者となった。その後戊辰戦争で江戸城無血
開場後、薩摩藩兵、長州藩兵を指揮して、彰義隊との戦い、その後の戦いの戦
略、戦術を企画して指揮をとった。そして維新後、太政官制において軍務を統
括した兵部省における初代の大輔(次官)を務め、事実上の日本陸軍の創始者、
あるいは陸軍建設の祖と見なされることも多い。その後京都で暗殺される。(
享年45歳)彼の晩年3年間、彗星のごとく現れて、彗星のごとく消えていった
人。その大村益次郎の半生を描いた長編小説です。

村田蔵六は百姓で村医の出身。礼儀作法はだめ、人付き合いもだめ、蘭学者で
緒方洪庵の塾でも塾頭を務める秀才、緒方洪庵の覚えも良い。何故かこの人を
桂小五郎だけは評価していていた。幕府を倒すべく薩摩・長州が鳥羽伏見で戦
い、東上して江戸城を無血開城した時、官軍の兵士は誰もいなかった。薩長の
み、また資金もなかった。ましてその後どうするかということも判っていない。
西郷は江戸の警備を勝海舟に任せる。でも任された海舟も困ってしまう。勝手
に彰義隊など。反薩長の志士(幕府軍)が板東、東北には一杯いる。そんなと
き大村益次郎が江戸にやってきて総司令官になってしまう。

そして西郷も大村益次郎の作戦に反対もしない。政府軍の中では嫌われ者で一
人で奮闘していた大村。嫌ってはいたが、大村の作戦が全て当たるので誰も文
句は言えない。官軍が勝ったら何をすれば良いか?将来ビジョンをしっかりと
持っていた者はそのとき大村くらいしかいなかった。西郷も大久保も岩倉具視
も徳川幕府に変わって薩摩・長州が主体となった各藩連合政権的なことを考え
ていたのではないか。でも亡くなっている坂本龍馬、勝海舟などは民主主義の
国を目指していた。どちらというと大村も旗本のだらしなさ、農民出身の歩兵、
砲兵などの活躍などをみるにつけ、支配者階級ではない政治、政権を目指して
いたきらいがある。
戊辰戦争が終わってから、軍務を統括した兵部省で薩摩の反乱(西郷)を予見
して大坂に軍事基地、軍需工場、弾薬庫などを作ることに走り回っていた。

ただ、大村益次郎という人は人としてみた場合、とてもつきあいにくい。いや
なやつだったような気がする。つきあいたくないそんな感じがする。時代が少
し違ったら全く世の中には出てこなかった人。また明治維新に彼が幕府軍にい
たら、結果は全く逆の結果になっていたかも。幕府軍で戦った大鳥圭介は緒方
洪庵塾で大村と同門。長州藩に呼び戻されるまで宇和島藩では蒸気船の設計、
幕府講武所教授などしていた。収入も多く、何故博給の長州に帰ったのか?郷
土愛だったのかも(幕府に長州を滅ぼされるという危機感)この小説で少しほ
っとするところはシーボルトの娘楠イネの支援者、保護者、恋人?の場面かな。

長い歴史の中であっという間を過ごしていった凄い人ということが言えるかも
しれない。大村の部下の山田顕義が西南の役が終わったとき、大山巌、山県有
朋の二人をさして「あいつらはまだ軍隊でしか飯を食う方法を知らないのか」
といってあっさり引退した。というエピソード。その後を見ると面白い指摘だ
と思った。

また福沢諭吉(緒方洪庵塾で大村の後輩)は大村のことをあまりよく言ってい
ない。(尊皇攘夷ものだと)一方大村は福沢のことは口ばかりの人と。長州人
も吉田松陰はじめくちばかり。でも大村は一般的な長州人とも日本人とも違う。
明治になってから存在価値が薄くなっているが木戸孝允(桂小五郎)は剣術に
も優れているが、人を使うのが旨い。そして危険を察知すると戦わずに逃げる
に徹していて。幕末の大切な時期にキッチリ仕事をしているという感じがする。

司馬遼太郎の小説は著者独自の歴史解釈(相当詳しく調べている)が随所に出
てくるので、話が筋が飛び飛びになったりするのがちょっと欠点。また独自の
解釈が絶対化のように上から目線で断定調がちょっと気になる。

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「大改命というものは、まず最初に思想家があらわれて非業の死をとげる。日
本では吉田松陰のようなものであろう。ついで戦略家の時代に入る。日本では
高杉晋作、西郷隆盛のような存在でこれまた天寿を全うしない。三番目に登場
するのが、技術者である。この技術というのは科学技術であってもいいし、法
政技術、あるいは蔵六が後年担当したような軍事技術であってもいい」