書名:禅海一滴
著者:北浜 洪川
訳者:盛永 宗興
発行所:柏樹社
発行年月日:1987/2/1
ページ:272頁
定価:2575円+税
明治時代の前半に活躍された北浜洪川老師の「禅海一滴」という書です。防州岩
国の府主吉川有格公のために撰述された書です。仏教・儒教・道教・神道を極め
てそれらの真髄を孔子の言葉を選出しながら丁寧に説明している。北浜洪川老師
は廃仏毀釈に対しても身を挺して反対された。円覚寺の管長も務められている。
これを盛永宗興老師が訳している。
二千数百年の間いろいろな時代に、いろいろな地域で多くの人に認められ価値あ
りと伝えられてきた「教え」が今日になって急に役に立たなくなった。と本当に
思われますか?嘗て仏、聖賢、祖師と尊称されてきた人々が現代の私たちよりも
智慧の劣った人々だったと思われますか?この本の価値は再読、三読して後決め
て下さい。と訳者の盛永宗興老師はまえがきに書いている。
古人の言葉に「大道を学ばんとするものは大憤志・大疑団・大信根の三つを必ず
持たねばならぬ。これは鼎に三つの脚があるようなものでどの一つが欠けても道
は成就せぬ」この中で発憤がもっとも重要と考えていると言っているが、最近特
にわすれらているのが大信根、信じること。信じ切ること。先生を信じ切る。そ
して自分に与えられた性質・性格・資質を信じ切ること。批判・非難・批評の前
に信じる。それがあって初めて発憤も生きてくると思う。
孔子の言葉を例に古人の言葉、北浜洪川老師の言葉を交えながらじわじわと心に
響いてくる語りかけが心地よい書です。