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黄金の時
« 投稿日:: 5月 17, 2017, 06:18:04 pm »
書名:黄金の時
著者:堂場 瞬一
発行所:文藝春秋
発行年月日:2015/6/10
ページ:314頁
定価:1650円+税

1964年日本初のメジャーリーガーとなる南海ホークスの村上雅則。その前の年
1963年にマイナーリーグ・サクラメント・ゴールドハンターズで野球をする一
人の日本人がいた。

売れっ子作家本谷要は、音信不通(父は作家のような不安定な職業を嫌ってい
た。親子関係は険悪状態)となっていた商社マンの父の訃報を聞き、心ならず
も遺品の整理をすることになってしまった。その中に一枚の写真を見つける。
そこにはマイナーリーグ・サクラメント・ゴールドハンターズで野球をする若
き日の父があった。今まで全く知らなかった過去の父、仕事一筋で商社マンと
して世界を飛び回っていた、副社長まで出世していたが、要は全く父とは没交
渉、興味も持っていなかった。「野球嫌いのはずの父は、昔マイナーリーガー
だった」に興味を持った要は父のことを調べ始める。きっかけは当時ゴールド
ハンターズを取材していた地元紙の記者からの1通のメールから。

高校生の時に父・総一郎は母が亡くなる。そして父(祖父)はアメリカに。卒
業まで日本で一人暮らす。そして高校野球に励む。強豪校でレギュラーとして
甲子園にも出場している。強権的な父親の指示でアメリカで大学に入り商社マ
ンになることを“強制”された。アメリカに渡り、大学に入るためにハイスク
ールに通う。そんなとき草野球でホームランを打った。そのホームランはちょ
うど見に来ていた大リーガーヤンキースのマイナーでスカウトの外野フェンス
から離れたところにあった車のボディーを直撃した。そのスカウトは総一郎に
マイナーリーグ(「1A」)にこないかと誘いかける。マイナーリーグ”は、三
層構造で下から「1A」、「2A(ダブルエー)」、「3A(トリプルエー)」にな
る。その上が当然“メジャーリーグ(世界最高峰)”となる。

祖父に反抗し、異国の地で新たな野球の魅力に取りつかれていた父は祖父に黙
ってマイナーリーグに行く。たった3ヶ月のマイナーリーグであったが、サク
ラメント・ゴールドハンターズはその年は優勝争いをする強豪チーム。同僚達
は総一郎から見れば凄い連中、その中に混じって総一郎が3ヶ月の試合に参加
していく、そして自分だけ、自分の成績だけ。チームが負けても自分の成績を
あげて上に行くことだけを考えている同僚達を変えていく過程を綴っている。

要がアメリカに渡って生きている元の同僚を訪ね調べ回った。父の軌跡を描い
ている。本谷家の父子3代の物語。どの父子も不器用な男たちを野球を通して
描いた感動の物語。