書名:毒 風聞田中正造
著者:立松 和平
発行所:東京書籍
発行年月日:1997/5/31
ページ:318頁
定価:1900円+税
足尾銅山鉱毒事件は日本初、最大の公害事件です。鉱毒によって破壊された谷中
村。その被害に真っ正面からぶつかっていった田中正造の姿を渡良瀬川に棲むナ
マズ、カエルまたは田中正造の頭の髪に棲み着いたノミやシラミという小動物の
目を通してこの鉱毒事件の本質に迫っている。
田中正造は国会議員であり、国会でもこの鉱毒事件について辛辣な質問、改善要
求を繰り返すが政府は見向きもしない。答弁すらしないことも。打つ手の無くな
った田中正造は命を掛けて天皇に直訴したことでも知られている。政府の態度は
明治時代も現代も全く変わっていない。民衆の視点からは絶対考えない。行動し
ない動物だということがよく分かる。ノミ、シラミ以下だと思える。ここに登場
するノミ、シラミはよく考えている。
「富めよ増やせよ」で国力の充実、殖産興業、それに重要な足尾造山(古河財閥
)は国として守らなければいけないもの。渡瀬川、地域の住民がどうなろうと関
係ない。そんな流れで1970年まで延々と公害を垂れ流してきた。その原点が見ら
れるような気がする。