書名:早雲立志伝
著者:海道 龍一朗
発行所:角川書店
発行年月日:2011/1/30
ページ:501頁
定価:1900円+税
後北条氏とも呼ばれる小田原北条氏は早雲を初代とし、室町後期の乱世に於いて
五代にわたって100年間、関八州を席巻した氏族だった。その初代早雲の半生を描
いた物語。「北条早雲」という人物は謎の多い人物。そもそも北条という名前も
長男氏綱の時に伊勢から改姓している。
北条早雲というのは明治時代の軍記物から広がったらしい。ここでは室町幕府の
中で公家の側近を務める役(申次衆)伊勢盛時という備中伊勢家の御曹司として
登場する。姉の嫁いでいる今川家(駿河)の危機に支援に都から父の命で送られ
てきた伊勢盛時が、今川家の内紛に介入することになる。その内に今川家ばかり
ではなく、板東の地の争乱に巻き込まれていく。数奇な運命に翻弄されながら小
田原城を奪取するまでの波瀾万丈の半生を描いている。
「北條龍虎伝」へ繋がっていく。そして「北条覇道伝」が出来れば北条三代記が
完成すると著者は言っている。この作家は手抜きがすくなく詳細に書き込んでい
るので少々面倒なところがあるが、誠実さを感じる。その分だけ物語の展開が単
調、語り部的な要素は少ない。でも十分に楽しめる本である。箱根湯本に早雲寺
というお寺がある。そこには後北条氏五代の墓がある。名前は知っていてもよく
知らない北条氏少し気になる。