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讃歌
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 06:49:32 pm »
書名:讃歌
著者:篠田 節子
発行所:朝日新聞社
発行年月日:2006/1/30
ページ:355頁
定価:1700+税

ヴァイオリンの演奏で天才少女と騒がれ、日本国内でのコンクールの優勝、海外
のコンクールでも二位になった柳原園子は、高校を卒業してアメリカ西海岸に留
学。そこでカルチャーショック、自分の才能の限界の壁に突き当たって自殺未遂
を起こす。その後日本に帰ってきて両親に支えながら、後遺症に苛まれ20年以上
寝たきりの生活。そんな彼女が教会、老人会などでヴィオラの演奏をはじめてい
た。その演奏会は口コミで小さく広がっていた。

そんな演奏会で「シューベルト アルベジオーネソナタ」を松平千恵子という音
大の教授の伴奏で柳原園子がヴィオラを演奏する。それを聞いた小野は感動的な
フレーズに思わず涙する。小野の仕事はテレビ局の番組を請け負っている映像会
社のプロジューサー補佐。柳原園子に興味をもったかれは彼女の半生を取り上げ
たドキュメント番組を企画する。その番組によって一躍時の人となった柳原園子
。ひとつのサクセスストーリーですが、その後は篠田節子得意の反転が。

話は緻密でよく練られていてストーリーの展開も見事、欠点もない物語ですが、
その中に人間が出てこない。第三者的な登場人物ばかりという感じがした。読ん
だ人を動かすなにかがない。段々プロ作家の悪い癖を身に付けてしまった感じが
した。これは作家の人間の幅の狭さかなという気がする。本と人とのインタビュ
ーの資料集め、それも作品の流れに沿ったものばかり集めた結果か?遊びがない
、ぎすぎすした作品になっているように思う。