書名:明智佐馬助の恋
著者:加藤 廣
発行所:日本経済新聞社
発行年月日:2007/4/20
ページ:445頁
定価:1900 円+ 税
「信長の棺」で作家デビュー、「秀吉の伽」につぐ「明智佐馬助の恋」で三部作
は完結。明智光秀の娘婿明智佐馬助が主人公。明智側からみた信長、豊臣秀吉を
描いている。また本能寺の変の真相に迫る大作。晩年の信長の異常な振る舞いの
原因を幼少期にもとめ、父、母の縁が薄かった、また乳母にも恵まれずいつも一
人の信長の子供時代からその後の行動を推定している。
明智光秀の謀反の真相は?徳川家康の接待役を外され、中国の秀吉の支援を命じ
られてからの光秀の行動。光秀は当時の武将としては教養も、古式、礼儀作法な
ど超一級の人物だった。それが今でも真相のわからない突然の謀反。本能寺の変
の直前、丹波亀山城から愛宕山での連歌の会、そして水尾で前の関白近衛前久と
会って、「天皇から信長追討の宣示を貰うので、信長を討て」と煽られて、この
まま朝廷を滅ぼして、自分が朝廷に成り代わろうとしていた信長を止めないとと
いう思いに駆られて本能寺討ち入りを決意する。
本能寺には南蛮寺までの秘密の抜け穴が掘ってあったが、豊臣秀吉によって封鎖
されていた。明智左馬助は必至に信長の遺骸を探すが見つからない。その時阿弥
陀寺の清玉上人(実は信長の義理の兄弟)が滅ばされた信長軍の沢山の遺骸とも
に阿弥陀寺に引き取って供養していた。その後、明智左馬助は清玉上人からその
ことを打ち明けられるが、信長の遺骸を隠す(信長の天下を狙っていた秀吉、柴
田勝家他が狙っている)知恵をかす。そしていまでも信長の遺骸はどこかは不明
のまま。
敗者は歴史から消されてしまうので、明智光秀のことなどは判らないことが多い
けれど、まして明智佐馬助のことなども。しかし作者は想像力を駆使してなかな
か面白い解釈と新説を披露してくれている。