投稿者 スレッド: ドキュメント 靖国訴訟 戦死者の記憶は誰のものか  (参照数 421 回)

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ドキュメント 靖国訴訟 戦死者の記憶は誰のものか
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 06:01:15 pm »
書名:ドキュメント 靖国訴訟
   戦死者の記憶は誰のものか
著者:田中 伸尚
発行所:岩波書店
発行年月日:2007/8/28
ページ:258頁
定価:1900 円+ 税

靖国問題の核心は何か?「A級戦犯」分祀問題でも外交問題でもない。戦死者の
記憶は誰のものか?という問題に各地で起こった靖国訴訟を取材したドキュメン
トです。

靖国と国家の密接な関係とはどのようなものか。戦後政教分離が憲法にも謳われ
ているが、厚生省、靖国神社が協力して戦後合祀を続けている。特に沖縄は軍人
ばかりではなく、一般人も戦争協力者として戦後補償の対象にしている。例えば
兵士に隠れていた洞窟を追い出された人などは洞窟提供という協力。

これはすこしでも一般人を補償の対象にするための便宜的な扱いだと思う。本の
すこしの人々ではあるが、遺族に断りもなく靖国神社に合祀されているのは追悼
の自由・祀られない自由を奪われていると主張する靖国訴訟。逆に大半の遺族に
とっては夫、父の死が犬死にだった。国は何もしてくれないというのは耐えられ
ない。という感情もよく分かる。

韓国や台湾の遺族らも原告に加わり日本各地で提起されているこれら一連の訴訟
から、歴史認識と人間の尊厳に関わる「自由」の意味を考える。本人は死んでし
まっているので、本人が主張する自由とは違い。遺族の自由(遺族の中でも兄弟
で考えが変わる場合もあり)を主張するところは難しいところもある。この種の
本はどちらかというと善悪を一方的に主張しているものが多いが、この本は靖国
訴訟をわかりやすく歴史から説き起こしている。また当事者寄りではなく公平な
見方をしているように思う。

本書より
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国家と靖国神社が一体となって戦死した肉親を遺族には何の了解もなく一方的に
英霊と意味づけて合祀し続けることが、戦死者を記憶し、自由に追悼する遺族の
心(権利)を奪い、政治的に利用している原因ではないかと、という認識が共有
され始めたのである。国家の靖国神社による戦死者追悼のあり方は、敗戦前から
の意識・感情に引きずられ、戦後社会でも違和感がなく当たり前のように受け止
められてきた。
これは「民衆の靖国」意識に加えて「国のために死んだ人」に国家が敬意や感謝
を表するのは当然だという根強い意識に支えられてきた。