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責任 ラバウルの将軍 今村均
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 05:27:40 pm »
書名:責任 ラバウルの将軍 今村均
著者:角田 房子
発行所:筑摩書房
発行年月日:2006/2/10
ページ:553頁
定価:950 円+ 税

 太平洋戦争の頃、一種のエアースポットのように戦争から取り残されていた地
域があった。それはラバウル。大将今村均はラバウルに7000haの農地、大規模な
地下要塞を築いた。それを見た米軍はラバウル攻略を諦めて、それ以外の基地を
攻略していく。角田房子(故人)が描く力作。鋭い視点が面白い。

戦後生き残った今村均の関係者達にインタビューをこまめにおこなっている。司
馬遼太郎の作品とは全く違って取材の質が違う。司馬の場合は彼特有の始め結論
ありき、それの証拠を集めて司馬史観なる独自の説を展開しているが、角田の姿
勢は全く違う。自分の足と頭で追いかけていくスタイルが良い。一つのロマンを
見ているようだ。今村均は「歎異抄」と「聖書」をいつも手元において暇がある
と読んでいた。でもキリスト教徒でも仏教徒でもない。

長い長い戦犯裁判でも部下を救うためには何度でも証言台に達、全ての責任は大
将の自分にある。を貫いた人。戦犯と呼ばれた人の中には本当にどうしょうもな
いつまらない人もいるが、でっち上げの容疑で戦犯として処刑された人も。また
今村のように死刑にはならず生き残った。刑期を巣鴨拘置所で過ごさせるために
日本に送り返された後、自ら交渉して過酷な状況のマヌス島の戦犯収容所へ。元
の部下達と一緒に服役する。

こんな大将もいたことに、少しの救いがある。今村均のことに興味を持った。こ
の本は一読する価値のある力作です。