投稿者 スレッド: 昭和史 戦後編 1945-1989  (参照数 393 回)

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昭和史 戦後編 1945-1989
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 05:08:02 pm »
書名:昭和史 戦後編 1945-1989
著者:半藤一利
発行所:平凡社
発行年月日:2009/12/6
ページ:612頁
定価:900円+税

日本の近代は「国家の興亡四十年の歴史」といっています。維新から日露戦争ま
での40年は「坂の上の雲」のように上がれ上がれ、それから大正-昭和20年まで
の40年は、明治の人達の折角の財産を食いつぶしてどんどん下り坂。国家を滅亡
させてしまった。戦後40年は〇からの出発、奇跡的といわれる高度成長期、その
後またまた落ち目。2025年頃にはまたまたどん底か。昭和の恐慌から、朝鮮、中
国、満州へ拡大路線をとっていった軍部、最後には米英相手の戦争へとそして敗
戦。この教訓は本当はいかさないといけないのだけれど。

この本は敗戦から現代史になる前の1989年までの歴史を著者が語った記録を文書
化したものです。天皇の戦争責任をどうするか?マッカーサーは?GHQの占領政策
。このあたりは殆ど習ったことが無かったことばかり、最近では白州次郎のドラ
マ、小説などで吉田茂とマッカーサーなど一部垣間見ることが出来ましたが、一
貫して眺めたことがないところ。GHQから押しつけられた「憲法」財閥解体、農地
改革、民法の改正とアメリカの若い人達が張り切って、新しい国家を作るのだ。
理想の国を作るのだという感じで、軍隊のない国。戦争を放棄した国、民主的な
国、それでも飲まざるを得なかった日本。憲法の次は東京裁判。これは何となく
裁く方も裁かれる方も分かっていて、どちらの役者を演じているところがある。

戦争の責任は天皇陛下には及ばないようにする。また軍隊のエリートには及ばな
いように、ただし誰かエスケートゴープは必要。ということで東条英機(これは
仕方ないところ)他、A級戦犯で死刑になったのは7名、ビルマでイギリス人捕虜
を多数殺したとされる形でビルマ派遣軍司令官木村兵太郎、シンガポール華僑虐
殺事件の責任は板垣征四郎、山下(山下奉文)軍団の参謀長の武藤章、南京事件
の責任は松井石根、満州の様々な事件の責任は在満特務機関長土肥原賢二、なぜ
死刑なったのか分からない広田弘毅。7人の内5人までが残虐事件の責任者として
死刑になっています。陸軍が多いです。殆どの日本人が知らないのはBC級戦犯と
して948人が死刑になっています。

前述の山下奉文大将、本間雅晴中将なども含まれています。A級として告訴され
て逃れたのが、岸信介、児玉誉志夫などはその後また出て来るのですが、元A級戦
犯という勲章をぶら下げて。この東京裁判で忘れてはいけないキーマン、田中隆
吉(元兵務局長)上海事件を起こした張本人。この人がGHQに協力的に動き回り「
裏切り者」のレッテルを貼られている。時代がこんな人を出してしまうのですね
。木戸内大臣は天皇に責任が行かないないように盛んに天皇を庇うものだから、
結果的に東条以下の人々に及んでしまうという協力のしかたになったみたいです


 戦後の混乱期にGHQ、マッカーサーの果たした功罪は?著者は民法を西洋の価
値観で変えたことだと言い切っている。民法は道徳がベースにある。日本に昔か
らあった道徳を全く無視して、男女同権、長子相続ではなく誰でも相続でる等民
主的と思われる民法も実は権利だけ主張して義務を忘れている今の世代を作って
しまった。と。成る程という気もします。老人を両親を大切にする道徳も無くな
ってしまった。今になって道徳といっても遅いですね。戦後から1989年までのあ
る部分からは自分も参加している歴史なので懐かしい思いをしたり、そうだった
のか?(講和条約、60年安保、キューバ危機、70年安保
など)部分部分としては知っていたが、一つの流れとして見てみるとまた新たな
側面が見えてくる。

歴史を学ぶときの順番として自分の両親、祖父母の時代から学ぶともっと興味を
持って学べるのではないかという気がした。どうも世の中逆をやっているように
思う。とんでもない歴史観をもっている大人、政治家などが出て来るのはやむ得
ない。ちょっと学び方が違っていたのではという気がする。前作と同様話し言葉
で書かれているので非常に分かりやすい。自民党を作った鳩山一郎の政治と今の
鳩山首相との違いなどもじっくり比べると面白いかもしれない。でも今と同じよ
うなことをやっている内閣もいて、いつまでたっても決められない。

リーダーシップが取れない政府というのは変わらないのかもしれない。戦後のGHQ
、マッカーサーはやっぱりお人好しで、日本は運がよかったのか?朝鮮戦争が起
こって方針が全く変わって軍隊を持たない憲法の国に、再軍備を強制してきたア
メリカ。調子がいいね。また安保の条件に沖縄に進駐軍をおくことを進めたのは
実は天皇。地政学的に考えても日本国内に基地があっても防波堤にならない。サ
イパン、ガム、台湾、沖縄が東西冷戦の防波堤ライン、戦略的な思考も優れてい
た昭和天皇だったのではないかと思う。また佐藤首相の時に戦争もしないで元の
領土沖縄を返して貰った。歴史的にみれば信じられない話。(やっぱりアメリカ
はお人好し?)未だに北方領土は返ってこない。(これが常識)