書名:社長の椅子が泣いている
著者:加藤仁
発行所:講談社
発行年月日:2006/06/15
ページ:493頁
定価:1900 円+税
富士通の野副前社長辞任にまつわるごたごたも新しい記憶ですが、昔も同じよう
な話がありました。野副社長とは全く違った人格、品の良さがある河島博氏の物
語です。河島喜好、博兄弟、共に一流企業の社長に兄弟揃って勤めた二人。兄河
島喜好は本田宗一郎の後社長に。山葉寅楠によって創立された日本楽器(株)の歴
史を河島博の歩む人生と共に描いている。浜松という一地方に技術、職人、頑固
一徹の人々が集っていた。本田宗一郎、藤島武夫の名コンビ、とは違ったあゆみ
の川上源一というカリスマ、65才を直前にして河島博に日本楽器の社長に就任。
そして2年突然”解任”それも臨時取締会も行わず、また河島の退任理由は病気。
これも虚偽の発表です。代表権を持った会長川上源一がまた社長に返り咲く、ど
ら息子浩を社長にそんないきさつに河嶋博は一言も発言はしない。沈黙は金の如
く黙って、別の世界へダイエーの中内にスカウトされて副社長としてダイエーの
放漫経営を引き締めて、ようやく体質改善がなったところで、ダイエーを去ろう
としていたところに阪神大震災。波瀾万丈の人生模様を描いている。川上源一時
代楽器屋というよりはオートバイから、大レジャーセンター、合歓の郷、嬬恋コ
ンサートなど多角経営に走って火の車になっていくヤマハ。中島みゆきを無名時
代に見つけ出して支援したというプラス面もあるが、社員にとっては天皇、実力
が出て来るとみんな掘り出されてしまう川上天皇、上場企業で大株主でもないの
にヤマハを私物化して、川上三代が君臨する。そんなことを始めて知った。河島
博は実力がありすぎる。また事務系の仕事でもきっちりを目に見える形にして成
果を上げてきた。そんな河島と川上とは所詮あわない。ダイエーの中内も最初は
よかったが、息子を社長にと思い描いたときにはやっぱり河島は邪魔と。人生の
面白さが随所に出て来る。野副前社長の告訴とは全く違った河島博の処世術は爽
やか。”沈黙は金”おれがおれがの時代には貴重な教訓かなと思う。