投稿者 スレッド: 丹下左膳  (参照数 266 回)

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丹下左膳
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 04:35:31 pm »
書名:丹下左膳(1)
   乾雲坤竜の巻
著者:林不忘
発行所:光文社
発行年月日:2004/5/20
定価:1000円+税

林不忘という名前は?最近鎌倉文学館で知ったばかり、でも丹下左膳の名前は誰
でも知っているのではないでしょうか?大河内傳次郞主演の映画でおなじみでは
?神変夢想流の町道場主・小野塚鉄斎が所持する乾雲丸、坤竜丸をかけた道場内
の試合。そこに男が乱入。独眼隻腕の快剣士丹下左膳、乱闘の末、乾雲丸は左膳
へ。坤竜丸は道場の俊才、諏訪栄三郎の手に。この二刀を巡って左膳の血が騒ぐ
。奇妙、奇天烈、エログロナンセンス、ニヒルな左膳が繰り広げる物語。時代考
証などはそっちのけで、八代将軍吉宗、大岡越前などが自由に登場する型破りの
面白い物語です。作者林不忘は35才で亡くなった。約10年の作家生活。生きてい
るともっともっと面白い物語が読めたのかもしれない。丹下左膳は主人公といい
ながら結構悪い悪い奴でもどこか憎めない。剣だけは強い強い剣士。また必ず左
膳に負けない天下の剣士がどこからともなかく現れる。強さのバランスが良い。
飛び抜けた強さでないところが良い。一気に読み切ってしまう面白さ、久々に感
じた。最近の本ではなかなか味わえない。

書名:丹下左膳(2)
   こけ猿の巻
著者:林不忘
発行所:光文社
発行年月日:2004/6/20
定価:800円+税

書名:丹下左膳(3)
   日光の巻
著者:林不忘
発行所:光文社
発行年月日:2004/7/20
定価:705円+税

柳生家に代々伝わる秘宝「こけ猿の茶壺」。これを土産に伊賀の暴れん坊「柳生
源三郎」が十方不知火流の開祖、司馬老先生の道場に婿として江戸にやってくる
。将軍吉宗の時代。柳生家に日光の御修復の命が下る。全国の大名にいろいろな
普請を要請して少しでも力を削ぐための徳川の戦略。ところが柳生家には日光の
修復に出せるお金がない。古老の話では「こけ猿の茶壺」に先祖が残した莫大な
財宝を隠した場所の地図が。「こけ猿の茶壺」が転々と色々な人の元に回ってい
く。左膳にも、それを探し取り返そうとする柳生一族。司馬老道場の面々。また
将軍吉宗、大岡越前の駆け引き。奇想天外なものがたりに発展していく。テンポ
の良さ、フットワークの軽さ。諧謔味も色合わせていない。また独特の語り口に
、昭和のモダリズム、「転向」などというマルクス主義、昭和の言葉を江戸の中
に散りばめて、それがちっとも変な感じではない。作者の生きた時代を時代劇の
中に何気なく紛れ込まして違和感を抱かせない。3冊とも一気に読みました。