書名:神々の乱心(上)
著者:松本 清張
発行所:文藝春秋社
発行年月日:1997/1/30
ページ:401頁
定価:1800円+税
書名:神々の乱心(下)
著者:松本 清張
発行所:文藝春秋社
発行年月日:1997/1/30
ページ:380頁
定価:1800円+税
この作品は松本清張の絶筆となった未完の作品です。
昭和8年、東京近郊、梅広町の「月辰会研究所」から出てきた若い女を特高課第一係長古屋謙介が尋問した。女は宮城坂下門通行証を持ち、風呂敷には、月辰会の「御例示」が大事に包まれていた。「宮内省皇宮宮職」職員、北村幸子は、深町女官の代理として月辰会に訪れたようだったが、その数日後、職を辞して郷里に帰った直後に自殺した。自責の念と不審から「月辰会研究所」をマークして調べ始める。やがて渡良瀬遊水池から、2つの死体が見つかった。
華族の次男ばかりを集めた「華次倶楽部」を主催する、深町女官の弟にして萩園子爵の弟でもある萩園泰之も姉の深町女官の代理で自殺した北村幸子の葬式に出席することで「月辰会研究所」に疑惑をいだきひとり調査を始める。皇室、謎に包まれた女官の世界、満州事変、国家主義運動、大本教事件、大連アヘン事件など広範囲な昭和の歴史を背景に展開される物語。ちょっと欲張りすぎた感もありますが、なかなか壮大な展開です。松本清張の嗅覚で感じた時代の「腐敗」と「腐臭」を掘り下げていく社会派ミステリー展開です。最終的結論は未完ですが、編集部があとがきで結論の可能性を推定しています。