書名:沿線地図
著者:山田 太一
発行所:角川書店
発行年月日:1983/9/25
ページ:322頁
定価:505円+税
山田太一は1980年代、マイホームにこだわっている。川崎市の私鉄沿線の郊外、一昔前には農村の風景が色濃く残る郊外をブルドーザーで開発した新興住宅地、コミュニティの希薄な街そんな街を舞台に夫は高学歴で一流企業の中堅管理職、妻も高学歴で専業主婦。そしてやっと自分たちの住むマイホームを手に入れた家族、そこには息子。もう一組は高校卒業後街の電気屋を夫婦で営む家族、そこには娘。ある日突然高校生の息子と娘が家出をしてしまう。そして同棲。
平凡な日々を過ごしていた家庭に一瞬して起こるパニック、2組の夫婦が自分たちの今までの生活に反省しながら喪ったものの重要さに目覚め、その回復に努める姿を描いている。何処にでもおきそうなドラマを描いている。ホームとは本当は家族が言いたいことを言い、思っていることを言い、時には喧嘩もしながら日々生きていく、帰ってくる場所。
でも個室に鍵をかけ、個人は個人大人も子供も、夫婦もバラバラ、ただ一緒に個を出さずに、隠し事、感情を表には出さず、よい子、良い夫、良い妻を演じている。マイホームを持つだけの幻想に大胆な問題提起をしている。これは今では六本木ヒルズなど超高層住宅などが憧れの街、など延々と続いている幻想かもしれない。