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禊の塔 羽黒山五重塔仄聞
« 投稿日:: 2月 19, 2013, 12:32:19 pm »
書名:禊の塔 羽黒山五重塔仄聞
著者:久木 綾子
発行所:新宿書房
発行年月日:2010/7/15
ページ:197頁
定価:2000円+税

出羽三山とは山形県庄内地方に広がる月山・羽黒山・湯殿山の総称である。修験道を中心とした山岳信仰の場として、現在も多くの修験者、参拝者を集める。そしてその歴史も謎のところが多い。
瑠璃光寺五重塔に続いて、羽黒山五重塔を題材に、羽黒山のさまざまな伝説などをもとに、中世・南北朝時代の出羽の国庄内を舞台に、五重塔の建立に関わる人々を主人公に描く、歴史小説ロマン。

塔を建てるための事前準備、宮大工の仕事、屋根葺きの仕事、土台作り、雨水の流す溝作り、いろいろな仕事、そしてそれに関わる人々が生き生きと描かれている。本を書くために大工に弟子入りしたり、地元の宮司さんには修験道、羽黒山の諸施設など綿密な取材をしている。文章は洗練されているし、品格がある。

あとがきに、若い頃滋賀県の坂本に暮らしていたとか、そして延暦寺、園城寺の修行している姿を見ていた。また第二百五十一世天台座主即真周湛大僧正が延暦寺執行のとき、入門を許されて1年間、そこで修行したことがある。(1940年)その後ずっと延暦寺の僧侶とお付き合いがあったとのこと。小松智光尼とは生涯姉妹のようなつきあい。結婚後も夫婦で在家の比丘、比丘尼だった。
こんな所に久木綾子が五重塔に惹かれていった因縁があるのかもしれない。また深い深い教養、知識が文章の行間にあふれているのかもしれない。