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人間の進歩について
« 投稿日:: 2月 14, 2013, 07:52:26 pm »
書名:小林秀雄全作品集16
   人間の進歩について
著者:小林 秀雄
発行所:新潮社
発行年月日:2004/1/10
ページ:236頁
定価:1600円+税

人間の進歩について、湯川秀樹との対談集が収録されている。湯川秀樹がノーベル賞を受賞したのは昭和24年、その前年の対談です。「生活と作品」という中「作家に会ってみると、その作品より人間の方が面白い。中略作品をみれば人間なんかもう会いたくないというところまで来ている作家は大作家ですね。」そんな作家は昭和23年当時でも少なかったようだ。

「人間対神」の中で原爆が落っこった時「人間も遂に神を恐れぬことをやり出した。・・・なにか非常にいやな感じを持った。」「アインシュタインの予言が原理的に不可能か、技術的に不可能かしらないが、どうも現代の科学魂というものには邪悪を誘う何かがあるように思えます。」「人間は発明した技術に対して復讐されない自信があるかどうか、それほど強いでしょうか、人間という奴は」「目的のいかんにかかわりない技術自身の力がある。目的を定めるのはぼくらの精神だ。精神とは要するに道義心だ。それ以外にぼくらが発明した技術に対抗する力がない。」

今、読んでも新鮮で啓発されるところがいっぱいです。昔、小林秀雄も読んだけれど実は受験勉強のためというのが理由。でも読み返してみるとなかなか良いことを言っている。この時期にこれからは批評の時代だ。ひとつの仕事で飯が食えるようにならなければそれは仕事とは呼ばない。(正宗白鳥との対談の中で)批評も飯が食えるようになって初めて社会的な意義が出てくる。なんて趣旨のことを言っている。
また湯川秀樹も科学者であるけれど、文学、芸術、音楽など専門とは関係ないことでも十分小林秀雄に対抗できている。どんどんと話が広がって、相互に啓発されながら進んでいく。こんなは会話は見ていても面白いし、楽しい。ところが最近に専門家と呼ばれる人たちには無駄話と考えているのか?専門分野以外は知らぬ顔という感じがしないでもない。