書名:仮面の島
建築探偵 桜井京介の事件簿
著者:篠田真由美
発行所:講談社
発行年月日:2006/12/15
ページ:515頁
定価:762円+税
大富豪の未亡人玲子・レニエールが一人暮らすヴェネツィア本島沖に浮かぶ小島(サンタ・マッダレーナ)を日本企業が買収するという話に絡み、建物・土地の鑑定のために神代教授と桜井京介はヴェネツィアにやってくる。この島には大富豪が持っていたといわれる名画がある。作品名だけがしられていて本物は誰も見たことがない幻の名画。それがこのサンタ・マッダレーナ島に所蔵されているという噂があった。島の持ち主玲子・レニエール夫人に会うが、彼女は売却話など知らないという、同島に一緒に住んでいる彫刻家を名乗る女性は未亡人の義理の息子の仕業だと騒ぎ立てる。困惑した二人は引き下がりサン・マルコ広場のカフェで時間をつぶしているとそこに深春と蒼の二人が現れた。
その後未亡人のインタビューをするために現地にやってきた女性レポーター小宮は行方不明。そのレポーターを案じて元編集長藤枝、神代がイタリアで暮らしていた頃の友人のイタリア娘などとともに玲子・レニエールの島に渡るが、泊まった翌日恐ろしい危機が彼らに襲いかかる。随所にトリックがしかけられていて、どんどんそのカードを踏んでいってしまう危うさがある。またどんでん返しの連続にあっとさせられる。一気に読んでしまった。久々の篠田真由美。ヴェネツィアを舞台に観光旅行で散策しているようにヴェネツィアの風景、建物、広場、水路、建築などが自然に頭に浮かんでくる。物語だけではなくヴェネツィア紀行も楽しませてくれる。