投稿者 スレッド: 正雪記  (参照数 279 回)

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正雪記
« 投稿日:: 5月 07, 2014, 12:08:26 am »
書名:正雪記(上)
   山本周五郎長編小説全集第八巻
著者:山本周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2013/12/20
ページ:402頁
定価:1500円+税

書名:正雪記(下)
   山本周五郎長編小説全集第九巻
著者:山本周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2013/12/20
ページ:424頁
定価:1600円+税

10代の頃図書館へ通って棚に並んだ山本周五郎の本を片っ端から読んだ。懐かしい本が再度長編小説全集という形で新潮社から出版された。この正雪記は昭和20年代~30代に掛けての作品。由比正雪を主人公にした作品。徳川幕府も3代家光の時代になって段々落ち着いてきた。しかしその前にお家のお取りつぶし、改易で浪人が10万人に上ったと言われた時代。浪人の立場に立って、浪人の今後の暮らしを何とかしなければいけないと決意した正雪。作者の目もいつも弱い者の視点でこの時代を描いている。

歴史の中で由比正雪は浪人を組織して幕府転覆を謀った極悪人とされているが、実はよく分かっていない人物。そこに小説にする、作家のイマジネーションが入り込む余地が一杯ある。山本周五郎の視点はいつも弱い者の視点から、それらの人々に寄り添うように応援歌を謳っているそんな文章が随所にある。何十年ぶりに読んで見たがあらすじはある程度覚えていたが、また読んで見るとその中にすっかりのめり込んでしまう。また新鮮な感じで読み終わった。文章力が今はやりの作家達とは違って、迫力もあり、物語の構成もすっきりと垢抜けしているように思う。