TVメディアが大騒ぎ…これが「小泉米」の正体だ!食糧法や会計法を逸脱し、今後のコメ農政にも悪影響|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/372489《注目!と、メディアを総動員して一人の役者・一つの争点に関心をひきつけ、お祭り騒ぎをして、さもこれから全てが良くなる、とでもいうような錯覚を起こさせ、投票日に持ち込む。自民党の常套手段。日本衰退の元凶》
《自民党はまた、同じことをやろうとしている。騙されたら、今度こそおしまい》
立憲民主党の小沢一郎衆院議員(83)が「事務所」のX(旧ツイッター)でこう警鐘を鳴らしていたのが、コメの高騰問題を解消するために政府備蓄米の随意契約を打ち出した小泉進次郎農林水産相(44)についてだった。
大臣就任早々、備蓄米を「5キロ当たり2000円台」で放出することを大々的に公言した進次郎氏。テレビのワイドショー番組では「小泉米」なる造語も生まれるなど、連日その言動が注目されている。
28日の衆院農林水産委員会でも、立憲民主党の野田佳彦代表(68)や国民民主党の玉木雄一郎代表(56)など野党党首が質問に立つ異例の展開となったのだが、小沢氏が指摘している通り、消費者は「小泉米」のお祭り騒ぎに流されず、冷静に見極める必要がある。
そもそも忘れてならないのは、今回の随意契約による備蓄米の放出は、既存のルールを逸脱していることだ。
備蓄米の放出にあたっては、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(食糧法)の第37条(緊急時における対応)でこう定義されている。
「米穀の供給が大幅に不足し、又は不足するおそれがあるため、米穀の適正かつ円滑な供給が相当の期間極めて困難となることにより、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じ、又は生ずるおそれがある場合(略)」
つまり、これまで備蓄米の放出はあくまで「コメ不足(または不足の恐れ)」「生産量が大幅に減ったときに出すもの」という限定的な措置であり、江藤拓前農林水産相(64)が当初、備蓄米の放出に難色を示していたのも、この法律があったからだ。
その後、集荷団体に「買い戻し」の条件を付けた上で、法改正せずに放出OKとなったわけだが、「小泉米」はこの「買い戻し」の条件すらウヤムヤに。
また、会計法(第29条)では、随意契約は「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」や「緊急の必要により競争に付することができない場合」、「競争に付することが不利と認められる場合」で行われる契約形態だが、進次郎氏が大臣就任前の備蓄米放出は競争入札だったことから、随意契約の条件に合わないのは明らかだ。
■「小泉米」に最も困惑しているのは生産者
最も必要なのはコメ農政の抜本的な対策(田植え機に肥料を積み込むコメ生産者)/(C)共同通信社
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「今はコメは高すぎる。昨年と比べて2倍、地域によっては2.5倍に上がっている。消費者のコメ離れを防ぐためには、1回熱しすぎているマーケットに水を差さないといけない。冷静にさせなきゃいけないという思いだ」
農水委でこう答弁し、2021年産米は5キロ当たり1800円程度になるとの新たな見通しも示していた進次郎氏。しかし、いくら「政治判断」とはいえ、3000円→2000円台→1800円程度…と、大臣が発言する度に提示される価格がクルクル変わる状況は、かえって消費者の混乱を招くのではないか。
野田氏が農水委で、「農水大臣就任されてから(備蓄米5キロ)2000円と数字を明確にされた。バナナのたたき売りじゃないので、気合は分かるんですけども、それが適正価格かどうか」と価格の根拠について問いただしていたのも当然だろう。
そして今、最も困惑しているのが生産者ではないか。「小泉米」によって市況や今後の農政に与える影響が見えないからだ。
例えば、新米価格が高騰すれば安価な政府備蓄米が放出される——という手法が消費者心理に定着すれば、今後、農家がどれだけ創意工夫し、意欲的にコメを生産しても結局は安値になりかねない。そうなれば生産意欲は減退するばかりで、離農や耕作放棄地が増える恐れもある。
さらに備蓄米には限りがあり、通常100万トンある全ての備蓄米が「小泉米」によってゼロになれば、その分のコメをどこから補填するのかという課題もある。タダでさえ在庫不足が叫ばれる中、市場分を備蓄米にすれば店頭に並ぶコメの価格はさらに上がる可能性も出てくる。
随意契約で放出される備蓄米は2022年産米と21年産米。新米の24年産からみれば古古米・古古古米だ。本来であれば、あと2~3年も経てば飼料用米などで安く市場に出るはずだったコメで、すでに高値取引されたブランド米の価格に影響を及ぼす可能性は低いと言わざるを得ない。
「小泉米」によって農政の課題解決などという錯覚に陥ってはならない。
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