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鯨分限
« 投稿日:: 9月 07, 2016, 07:36:45 pm »
書名:鯨分限
著者:伊東 潤
発行所:光文社
発行年月日:2015/9/20
ページ:394頁
定価:1700円+税

紀州太地の捕鯨集団「太地鯨組」棟梁太地覚吾をモデルに明治になって段々斜
陽になっていく鯨漁の様子を描いている。この小説は明治11年に起きた未曾有
の海難事故「大背美流れ」を描きながら章を替えて棟梁太地覚吾の一族の歴史
と覚吾の子ども時代からの物語が2段仕立てで進行していく。

江戸時代幕末になると諸外国の捕鯨が盛んになってきて、紀州太地にも鯨がや
ってこなくなる。どんどん斜陽になっていく鯨漁とそれらに関わる捕鯨集団の
人々の生活、激変する国の有り様が彼を襲う、全国を駆け巡り生きる道をみつ
けようとするが、未曽有の海難事故が「太地鯨組」を壊滅させる。そんな過程
がダイナミックに描かれている。今、残る古式の鯨漁(追い込み漁)はこんな
経験を経てたどり着いた太地の生きる道だった。

舞台は太地から新宮、大坂、江戸、蝦夷地と覚吾の成長と歩調を合わせるよう
に広がっていく。黒船の来航、大地震と津波、海外の捕鯨船による乱獲、アイ
ヌを蹂躙するロシア、そして幕末の動乱と第二次長州征討への参戦など、次々
と困難が襲いかかる。でも棟梁太地覚吾はどんな苦境にも逃げない。負けるこ
とは判っていながら戦い抜いた男の浪漫がここにはある。

捕鯨の是非に揺れる現代にこそ読むべき、捕鯨に生きる人々の物語
http://www.nishinippon.co.jp/nlp/reading_guide/article/198320
【書評】書評家・東えりかが読む『鯨分限』伊東潤著 クジラと戦った強い男
たちの哀愁の物語
http://www.sankei.com/life/news/151220/lif1512200015-n1.html
『鯨分限』 (伊東潤 著)
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/5513