投稿者 スレッド: ながい坂  (参照数 193 回)

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ながい坂
« 投稿日:: 6月 10, 2014, 09:53:58 pm »
書名:ながい坂(上)
著者:山本 周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2014/2/20
ページ:498頁
定価:1700円+税

書名:ながい坂(下)
著者:山本 周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2014/2/20
ページ:510頁
定価:1700円+税

山本周五郎の晩年の最後の長編小説。この本の出版後1年で亡くなった。時期は東京オリンピックの頃。舞台は1800年頃の江戸時代。7万8千石の小藩。徒士組という下級武士(20石)の子小三郎は八歳の時に経験した父とともに経験した屈辱的な事件に幼い怒りに燃え、人間として目覚める。学問と武芸に励み、若き藩主藩飛騨守昌治に見いだされ異例の出世をする。三浦家の養子となり三浦主水正と名を改め、新田開発のための大堰堤工事の責任者として工事の完成を目指す。

異例の出世をした三浦主水正に対する藩内の風当たりが強くなり、藩主藩飛騨守昌治も幽閉され、心血を注いでいた大堰堤工事も中止となり、他派閥からは暗殺者に追われることになる。そこには長年に渡って続いている藩主継承問題があった。それも事件が起きても起きていることが見えない。そして知らないところでいろいろ決められている。そして誰も何も言わない。江戸時代の一藩士の8歳から38歳までの半生を描くことによって世の中の仕組み、人情、男とおんな、生き方山本周五郎の集大成が描かれている。「樅ノ木は残った」「虚空遍歴」とともに代表作とされる長編小説です。江戸時代を描きながら昭和のサラリーマン世界、出世、学業優秀のための英才教育、師弟の教育観など通じで現代社会に鋭い警告を発している。面白い本です。長編でも飽きさせることがないストリー展開、次は?次は?と期待しながら読み進んでしまった。

本書より
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「ここは不思議な国だ。臭いものに蓋というか、起きていることがしばしば見えない。知らないところでいろいろなことが決められていて、いつのまにか進められていく、誰も何も言わない。表面に出てこない。」