投稿者 スレッド: 座右の山本夏彦  (参照数 954 回)

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座右の山本夏彦
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 04:33:09 pm »
書名:座右の山本夏彦
著者:嶋中労
発行所:中央公論新社
発行年月日:2007/11/10
定価:740円+税

古い友人との語らい。友人というのは故人であったり、本と出会った友人だった
りと幅広い人々の友人があると思う。「生きているのは死ぬまでの暇つぶし」「
人間というものはいやなものだなぁ」そう思いつつ死の間際までペンを握り続け
た当代随一の毒言翁。山本夏彦。
「めでたく時空を征伐してそれだけ暇になりましたか、給金があがりましたか。
ただ何倍何十倍忙しくなっただけじゃないかと老荘の徒は言う。けれども出来て
しまったものは無かった昔に返せません。こうして人類は刻一刻と破滅に向かっ
ています」「論より証拠というより、証拠より論の時代なのである」「人前で立
派なことを言う人なら、たいていうそつきである」「忌憚なく言えということは
ほめてくれということだ」「私は記事より、広告を信じる」懐かしい夏彦節がい
っぱい詰まっている。文語文の素養、漢文の素養、今の人間にはない凄い教養、
語彙の豊富さ夏彦を超える人はいないのではないかと思う。またこの人は同じ事
を繰り返し繰り返し述べているので、古いようで今でもまた新しい。

短文の良さか?読むたびに違った思いにとらわれる。今はちょっとあの世に出張
しているが、何かの拍子にすぐ側に現れるのではないかと期待させられる。夏彦
なら「明日のエコでは間にあわない」など全く具体性のない表現など笑ってしま
う。「人命は地球より重い」などせせら笑っていた。「婦人には参政権はいらな
い」と堂々いっている。しかしその後で「男性にも参政権はいらない」と。その
本心は?
命を捨ててでも国、国民のことを考える人。行動する人に参政権を。民主主義の
限界を知ったつぶやきだったのかもしれない。今の世の中の動きを見ていると夏
彦ならずとも笑うしかないなのかもしれない。子育て支援に使うために扶養控除
を止める。専用主婦の人権侵害もはなはなだしい。国に育てられた子供は絶対は
親、年寄りのことは顧みない。子供はやっぱり親の働いたお金で育てる者、親権
を放棄させるような政治に明日はない。とぼやくかも?辛口、毒言に触れるのも
また必要ではないかと思う。久々の夏彦に気分転換出来たような気がする。

こんな小学生どう思います。若い頃に自殺を2回も試みた夏彦と合わせると見え
てくるかも。
本書より
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人の一生(山本夏彦 小学校4年生の時の作文)
おいおい泣いているうちに三つの坂を越す。生意気なことを言っている内に少年
時代は過ぎてしまう。その頃になって慌て出すのが人間の常である。慌てて働い
ている者を笑う者も自分たちがしたことはとうに忘れている。かれこれしている
内に二十代は過ぎてしまう。少しでも金が出来るとしゃれてみたくなる。その間
をノラクラ遊んで暮らすものもある。そうなことをしているうちに子供が出来る
。子供が出来ると少しは真面目に働くようになる。こうして三十を過ぎ、四十五
十も過ぎてしまう。またその子が同じ事をする。こうして人の一生は終わってし
まうのである。