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孤秋の岸
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 04:24:38 pm »
書名:孤秋の岸
著者:杉本苑子
発行所:中央公論社
発行年月日:1997/3/7
定価:3400円+税

宝暦治水事件は、江戸時代中期幕命により薩摩藩に木曽三川(木曽川・長良川・
揖斐川)の治水事業(宝暦治水)が行われた。工事中薩摩藩士51名自害、33名が
病死。総奉行の平田正輔、副奉行は伊集院十蔵久東。外様大名にはなにかと普請
事業を押しつけてきた幕府。島津藩にとっては幕命を受けるか、戦うか?という
切羽詰まったなか耐えに耐え治水工事を完了させる。その後総奉行の平田は自害
。江戸、大阪、京都の商人から莫大な借金をして資金集めを担当した。当然個人
の資格で約束していた懸案もあり、後で請求されても平田がやったこと。砂糖の
取引に優遇すると言う約束などはあくまで個人の約束と断れれと。これを引き受
けた時点で死を覚悟していた。宝暦治水を題材にした杉本苑子の直木賞受賞作品
。生前の吉川英治にこの作品を見せたとき、杉本の作品には色気がない。私だっ
たら薩摩から女が美濃に訪ねてくる場面などいれるのだが。完成を待たずに亡く
なったとか。なるほど杉本苑子の作品は他の作品でもやっぱり色気はない。また
この作品で見られる作風は全作品に通じて感じられる。やっぱり初心は変わらな
いようだ。この事件は、関ヶ原と共に、幕末の薩摩藩による討幕運動の大きな伏
線となるできごとか。