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西郷隆盛伝説
« 投稿日:: 5月 13, 2013, 08:21:10 pm »
書名:西郷隆盛伝説
著者:佐高 信
発行所:角川学芸出版
発行年月日:2007/4/30
ページ:361頁
定価:1800円+税

西南戦争で庄内藩(山形県鶴岡、酒田)の若者が2人西郷隆盛とともに亡くなった。奥羽越列藩同盟で薩摩・長州は敵のはず。戊辰戦争後の西郷隆盛と庄内藩の関係は?会津藩は西郷隆盛にまつわる維新から明治にかけての史実をもとに、歴史の謎を扱っている。『南洲遺訓』という西郷隆盛の遺訓を編集して配下のものに配ったのは庄内藩だったとか。靖国神社には西郷隆盛は祀られていない。もともと招魂社という長州の遺臣を祀った護国神社を勧請して、東京の靖国に祀ったのは大村益次郎(この人は明治2年頃暗殺されている)

江戸薩摩藩邸で浪人などを集めて江戸を錯乱して幕府を攻撃するきっかけを作らせる為に、相楽総三と赤報隊。幕府攻撃のために内乱を起こさせる。江戸の街を錯乱させる。農村部に向かっては税金を半額にする。等やりたい放題して幕府の信頼を低下させて、官軍が優位になるような下工作を行っていた。鳥羽伏見の戦いで官軍が勝ってしまった。そして勢いは官軍になびく。そこで相楽総三と赤報隊は偽官軍を語る不届きな奴ということにして信州下諏訪で処刑されてしまった。形勢が自分たちに優位になってくると見捨ててしまった。これにも西郷隆盛も絡んでいたと思われる。相楽総三と赤報隊もやっぱり靖国神社には祀ってない。

国を愛する、国のためと言ったときに現政権を支持するのか、支援するのか、応援するのか。それとも現政権には国のため、国を愛するためにあえて反対するのか?西郷隆盛に愛国心が無かったとは思えない。江藤新平も、尊王攘夷派、開国派いずれも国のことをおもった。お国のため。すると国のために犠牲になった尊い命というのは?佐高信としては珍しくまじめに史実を追い求めている。また出身の酒田、庄内藩の歴史などかなり力が入ったのか?庄内藩は領主酒田家、商人本間家が有名。

戊辰戦争に負けたときに会津は藩士は斗南藩(十和田市・むつ市・野辺地町)へ強制移動させられた。したがって会津には藩士は残っていなかった。その後一部会津に戻ったけれど。庄内藩に会津藩、岩城藩への移動という話もあったが、庄内藩家老、本間家の莫大な財産の力で庄内藩に止まっていいことになった。戊辰戦争の敗戦処理に当たったのは西郷隆盛の部下の黒田清隆、この温情が庄内藩に南州遺訓を編集させたり、南州神社を建てたり、西南戦争に行くことになった。また未だに西郷の人気が高い。明治から大正、昭和戊辰戦争で戦った両軍の子孫たちがいろいろ登場してきて、ちょっと生々しい話も出てくる。

戊辰戦争で会津では戦死した人たちの死体は葬ることを許されなかった。自然に腐るのを待つだけ。これが未だに会津と薩長が仲良くできない大きな原因。芋(いも)侍(薩摩いも)。ぼたもち侍(おはぎ=萩・長州)。という悪口もなかなか収まっていない。内村鑑三、田中清玄、安岡正篤、管実秀、小川健次郎など多士済々でなかなか興味ある。西郷隆盛という人は味方にも敵にも支持者、熱狂的な信者を作る魅力のある人。またこの本では西郷隆盛は決して征韓論ではない。その証拠をいろいろ出してきて説明している。比較的評価、批判が少なく史実を見つめるという視点が良いと思う。佐高信らしからぬ良い本ではないかと思う。