投稿者 スレッド: 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史  (参照数 232 回)

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「司馬遼太郎」で学ぶ日本史
« 投稿日:: 8月 12, 2017, 04:24:41 pm »
書名:「司馬遼太郎」で学ぶ日本史
著者:磯田 道文
発行所:NHK出版
発行年月日:2017/5/10
ページ:187頁
定価:780 円+税

歴史学者が論じてこなかった「司馬遼太郎」を、歴史家磯田道文が論じている。
『太平記』の作者である小島法師、頼山陽、徳富蘇峰と並ぶ、日本人の歴史観
に強い影響を与える歴史学者であると。司馬遼太郎のことを「歴史をつくる歴
史学者」司馬遼太郎の歴史観を司馬史観と呼ばれている。戦国時代の下克上を
描いた「国盗り物語」、幕末の転換期「竜馬が行く」明治の大村益次郎を描い
た「花神」、秋山好古、真之を描いた「坂の上の雲」、「峠」などを題材に司
馬遼太郎の視点を分析している。でも司馬さんが小説に描かなかった「鬼胎(
きたい)の時代」(昭和前期)とは何だったのか-。自分の戦争体験からか、
昭和前期は決して描いていない。

乃木希典(203高地)を無能な将軍の頃から段々日本人の病いである「前例主
義」、合理主義、リアリズムが消えて、精神主義が台頭して、集団的に一方向
に進んでしまった。統帥権という化け物を明治の頃は元老が押さえていたが、
昭和に入ると西園寺公望しか元老は残っていなかった。三権分立の外部に統帥
権、そしてそれは天皇の権限もない。軍の独断で何でも出来た時代。これは明
治時代に軍隊、制度をプロシア(ドイツ)に、明治時代に確立した制度、仕組
みの中に腐敗構造を持っていた。昭和前期にその悪いところが出てきて、戦争
に突入、敗戦となった。
でも長い長い目でくると当時戦勝国といわれた国々、本当に勝ったのか?また
敗戦国は本当に負けたのか?どちらとも言えないのでは?多くの犠牲を払って
やるほど価値あることだったのか?

これからも合理主義、リアリズムの視点から判断していかないととんでもない
方向に集団で導かれてしまう。日本は神国、装備がなくてもやる気さえあれば。
一生懸命やればとか気を付けないといけない資質を持った日本人という事を自
覚すること。勇ましいのが賞賛されてくるときは気をつけないと。「西郷どん
に伝えておくれ、勝は臆病で、心配で仕方ないのだ」と。これは江戸無血開城
の交渉前、薩摩の益満に伝言した。威勢の良いとき、臆病だといえる勇気を持
とう。著者の視点で「司馬遼太郎」を分析紹介している。「司馬遼太郎」を読
む1つの案内書です。



本書より
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戦国時代の下剋上、幕末維新の大転換、明治から昭和への連続と断絶……歴史
のパターンが見えてくる
当代一の歴史家が、日本人の歴史観に最も影響を与えた国民作家に真正面から
挑む。戦国時代に日本社会の起源があるとはどういうことか? なぜ「徳川の
平和」は破られなくてはならなかったのか? 明治と昭和は本当に断絶してい
たのか? 司馬文学の豊穣な世界から「歴史の本質」を鮮やかに浮かび上がら
せた決定版。

序 章 司馬遼太郎という視点
第一章 戦国時代は何を生み出したのか
第二章 幕末という大転換点
第三章 明治の「理想」はいかに実ったか
第四章 「鬼胎の時代」の謎に迫る
終 章 二一世紀に生きる私たちへ