投稿者 スレッド: 黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎  (参照数 385 回)

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黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎
« 投稿日:: 1月 21, 2014, 02:49:06 pm »
書名:黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎
著者:山本 謙一
発行所:講談社
発行年月日:2011/9/15
ページ:283頁
定価:1600円+税

名刀五番勝負江戸で流行りの「黄金の太刀」をめぐり、一万両の詐欺事件が発生。この事件を追う刀剣商光三郎の活躍を描いている。

御腰物奉行黒沢勝義の長男・光三郎は勘当されて、町人となり己の好きな道刀剣商を営んでいる。そこへ父黒沢勝義から至急の呼び出しが掛かった。勘当されている身に呼び出しが掛かるときは刀に絡んだ話に違いないと見当をつけていくと、やっぱり白石瑞祥という詐欺師が旗本田村家に「正真正銘の黄金の太刀だと称し、名宝小烏丸」を持ち込んだ。それを大名松平家に紹介し、1万両で売った。その1万両が田村家から白石瑞祥とともに忽然と消えてしまった。「黄金の刀」というのは鋼に少しの金を入れて見た目を豪華にした刀、勿論切れは悪い。刀工たちからは邪道と云われている。でも江戸時代も中頃になると刀の役目は実践から遠ざかって、見た目に心を奪われる人も出てきた。稀代の詐欺師・白石瑞祥を追って相州、美濃、山城、大和、備前の日本刀「五か伝」の地をゆく、光三郎は鍛冶平と一緒に、田村庄五郎の家来という形で旅を続ける。そんな物語。刀、鍛冶、刀工についての蘊蓄が一杯の本です。

本書より
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深奥を見極めたいなら、ただ虚心坦懐に、じっと観ればいい。怒ったり、嘆いたり、惚れたり、こちらが余計な感情をもっていると、目が曇ってしまう。ただ、なにも思わずに、そこにあるものとして観るがいい。  p108

刀身に反りがあれば、振り下ろす力に遠心力がはたらき、物打ちあたりで物を断ち切る力が格段に増す。加藤清正が、反りの大きな力を好んだというのは、馬上から打ち下ろす打撃力の強さを知っていたからだろう。打撃力があれば、たとえ兜がわれなくても、脳震盪を起こさせて、兵を撃退できる。

相州鎌倉:新藤五国光、五郎入道正宗、
・相州伝の上出来の刀が、あれもこれも正宗と極められてしまった。 p67
・正宗はよい鍛冶だったに違いないが、ただ一人の正宗がそのようにたくさんの名刀を鍛えられるわけではない。 p82

美濃関:関七流-善定、三阿弥、奈良、得印、徳永、義賢、室屋。兼門宗九郎。関孫六兼元。関兼定(之定)。
・関の刀鍛冶が、もっとも腕を振るい、数も多かったのは、永正、大永、天文のころである。 p110
・関には、領主がいなかった・・・支配者がいないのなら、どこの大名から注文があっても、それに応じて刀を売ることができる。鍛冶にとっては、まさに自由を謳歌できる別天地であったわけだ。 p113-114
・善定流は、大和手掻派の作風を伝える一流である。鎬が高く、柾目まじりの地金が特徴だ。 p116

山城:三条小鍛治宗近。粟田口一門(国友、久国、藤四郎吉光)。来。堀川国広。
・宗近の在銘は、「三条」か、もしくは「宗近」、あるいは「宗近造」と決まっている。「三条宗近」と切ってあるのは、まちがいなく贋物であるというのが、刀好きの常識である。 p163

大和:天国(あまくに)、大和五派-千手院、当麻、手掻、保昌、尻懸。
・地味ながらも、実用的で質実な刀を鍛えていた。しかし、それはせいぜい南北朝から室町末期ころまでの話である。・・・いま奈良刀といえば、安物の刀のことである。 p176

備前長船:祐定。友成。正恒。包平。一文字の名工たち。長光。景光。
・備前伝のなによりの特色は、可憐な丁子刃にある。 p226
拳丁子、逆丁子、腰開きの丁子など、・・・さまざまな変化がある。激しさのある相州の刀は、鮮烈である。備前の丁子刃は、優美で美しくも鋭利である。大坂新刀の濤瀾刃は、相手を竦ませる効果がある。・・・美濃刀はちがう。・・・ただ、人を斬る道具として、ゆるぎなくそこに屹立している。  p131-132