投稿者 スレッド: 葛野盛衰記  (参照数 297 回)

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葛野盛衰記
« 投稿日:: 9月 01, 2013, 11:54:52 pm »
書名:葛野盛衰記
著者:森谷 明子
発行所:講談社
発行年月日:2009/10/27
ページ:452頁
定価:1900円+税

平安京が主人公の面白い時代小説?奈良の都から逃げ出したくて、乙訓の地に長岡京を建設する。その乙訓の地は多治比一族が支配する地域、桓武帝に縁を持つ多治比一族は遠くから帝を見守っている。その一族の異端児が長岡京建設のリーダー藤原種継を暗殺してしまう。また洪水、災害が多いところということが判ってくる。そこで帝も長岡京を見限って、平安京に都を移してしまう。平安京以前に住んでいた。

乙訓の多治比一族、兄国の秦一族、糺の森の賀茂一族、それらの女達に惹かれるように帝は平安京に都を建設した。そして平安時代の終わりの頃、桓武帝の子孫が平氏となって六波羅に君臨する。六波羅は鴨川より東。すなわち洛外。平氏はよそもの、平清盛が出てこの世の春を謳歌するが、そんな平氏を平安京は許しはしなかった。平家は滅亡したが、栄枯盛衰を繰り返す人間たち。ただ平安京のみが、変わらず栄え続けたが。人の世を遠くで見ている都がいる。

人は勝手に栄え、滅びていく。でも変わらない都がそこにいる。葛野(くずの)というのは乙訓の桂川周辺のこと。しかし拡大して平安京、都のことか。(多治比一族)、太秦の広隆寺周辺は宴の松原(秦一族)、糺の森(賀茂一族)桓武天皇の時代を1部、平家滅亡を2部、の2部構成なっている。最初は少し退屈だったけれど途中から興味をもって読んだ。この時代になると不明なところが一杯あるので、作者の創作欲をかき立てられるのかもしれない。なかなか面白い作品です。