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生物の無生物のあいだ
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 04:48:44 pm »
書名:生物の無生物のあいだ
著者:福岡伸一
発行所:講談社
発行年月日:2007/5/20
定価:740 円+税

著者は分子生物学者です。分子生物学の視点から見た生物とは何か?を述べてい
ます。また科学者のエッセーという感じの本です。生物学、細菌学など先駆者た
ちの歴史を訪ねながら、現代の分子生物学の世界へ導いてくれます。科学者にし
ては文章が旨い。野口英世の誇るべき業績は今では殆どないことが定説ですが、
なぜ五〇年もの間、他の学者が追試をして事実を確かめなかったのか。それは実
は研究所というある閉じられた世界。ボスの力であるとか。オズワルド・エイブ
リーといった「偉大なる先駆者」DNA、二対構造(これによって傷があっても修復
できる構造)4つの符合を使っただけの簡単な情報保存、継続の仕組みなど殆どオ
ズワルド・エイブリーの業績、でもノーベル賞は全く別の人に。ノーベル賞は学
者の業績を著すものではないということを科学の物語を読んでいると良く理解出
来る気がする。

「生命とは自己複製を行うシステムである」という定義、それだけではないよと
「生命とは動的平衡である」物理学を少し勉強した人なら、エントロピーの増大
(拡散)ということを知っていると思いますが、実は生物の世界にはエントロピ
ーの減少(秩序)、負のエントロピーが働いている。今、生きている生物を構成
してる物質は拡散している。そのままにしておくとくと拡散(死)。一つ一つの
細胞、タンパク質を廃棄して、新しい細胞、タンパク質を生成していくダイナミ
ズム。動的に動いている生命維持装置の仕組みを現代分かっている分子生物学の
知識で説明してくれる。この本はかなり難しい本です。でも65万部も売れている
と帯カバーには書いてある。また「よしもとばなな、茂木健一郎、内田樹、幸田
真音、高橋源一郎、武内薫、最相葉月、梅田望夫、森達也、野村進・・・怒濤の
大推薦」と推薦文なども入っていますが、果たして何人最後まで読んだか?疑問
が残るような気がします。じっくりと読んで、また読み直してようやく分かって
くるところが多い本で、興味本位に読む人には3分と読んでいられない本だと思い
ます。

売るための講談社の戦略かもしれませんが、これは邪道ですね。本当に読んで理
解出来る人にはみんな逃げられてしまっているのではないかと思います。

この本で生物の動的な活動、負のエントロピーを考えると、環境問題でもエント
ロピーの拡散ばかり、それも無限大の時間では。でも海、陸地には生物がDNAに書
かれたプログラムに沿って複製をしながら、動的平衡していく機能を考えると、
フィードバック(負帰還)を考えていかないと、解けない問題だというきもして
きた。コンピュータ程度ではシミュレーション出来ない。人間を超えることはで
きない。その人間はどう活動しているかも本の少しだけ分かってきただけ。この
本が教えてくれる。自然の偉大さを改めて感じさせてくれる。ミクロ世界の一端
からマクロの世界が見えてくる。「なぜ、人間に比べて、原子は小さすぎるのか
?」これの解はなかなか面白かった。