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にぎやかな天地
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 11:17:57 pm »
書名:にぎやかな天地(上)
著者:宮本 輝
発行所:中央公論新社
発行年月日:2005/9/30
ページ:370頁
定価:1600円+税

書名:にぎやかな天地(下)
著者:宮本 輝
発行所:中央公論新社
発行年月日:2005/9/30
ページ:357頁
定価:1600円+税

フリーの編集者船木聖司は顧客の老人(松葉伊志郎)から「日本の優れた発酵食品
を後世に伝える本」の製作を依頼される。船木は豪華限定本の編集、製作を手がけ
ている。今回の仕事は糠漬、熟鮓、醤油、鰹節…等の日本の発酵食品。日本各地を
取材する内に微生物の偉大な営みに魅せられていく。

船木聖司は神戸出身で独身、京都在住の製本職人。パトロンの松葉伊志郎に依頼さ
れて、発酵食品の本を作ることになります。その協力者として料理家の丸山澄男、
彼女の美奈子、カメラマンの桐原、助手の寺沢といった仕事がらみの人脈と、彼の
実家の母親、姉、母親の腹違いの兄の家庭、父親の死に大きく関わった人の家族と
の人間模様が並行して描かれます。32年前と7年前の、ある「死」がにぎやかな“
時間”を運んでくる。発酵食品の取材で京都宮津の飯尾醸造(酢)、鹿児島の丸久
鰹節店(鰹節)、和歌山新宮の東宝茶屋(なれ鮨)、滋賀県高島町の喜多品(鮒鮨
)など実際の店を訪ねている。久々の面白い作品です。

本書より
------------------
 死というものは、生のひとつの形なのだ。この宇宙に死はひとつもない。
 きのう死んだ祖母も、道ばたのふたつに割れた石ころも、海岸で朽ちている流木
も、砂漠の砂つぶも、落ち葉も、畑の土も、おととし日盛りの公園で拾ってなぜか
いまも窓辺においたままの干からびた蝉の死骸も、その在り様を言葉にすれば「死
」というしかないだけなのだ。それらはことごとく「生」がその現われ方を変えた
にすぎない。
この物語は、「死から生まれる生」あるいは「不死であること」を描いています。

私は死を怖がらない人間になることを願いつづけた。
だが、そのような人間にはついにはなれなかった。
きっと私に、最も重要なことを学ぶ機会があたえられなかったからだ。
(死というものは、生のひとつの形なのだということを。)
ならば、私は不死であるはずだ。 

◆富士酢◆飯尾醸造ホームページ
http://www.iio-jozo.co.jp/
丸久鰹節店:鹿児島県枕崎
http://www.meihin-kyushu.com/mall/maruhisa/
喜多品:ふなずし老舗「廃業」 400年の伝統…不振
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120805ddlk25020359000c.html
「喜多品」飛び込み取材の巻
http://www.sol.dti.ne.jp/~sin-saho/syokutano-funazushi.htm
ぐるなび - 東宝茶屋 (串本町・那智勝浦・新宮/居酒屋)
http://r.gnavi.co.jp/3100029/