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白浪五人男
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 04:58:17 pm »
書名:白浪五人男
著者:鈴木輝一郎
発行所:双葉社
発行年月日:1999/7/1
ページ:343頁
定価:1800 円+税

河竹黙阿弥「白浪五人男」は歌舞伎でも有名。この中に出てくる日本左右衛門は
池波正太郎「雲霧仁左衛門」のモデルにも鳴っている。臭い台詞もいっぱい。ち
ょっとしたパロディ。なかなか面白い。垂井宿から小田原宿までを縄張りとして
いる盗賊団、日本党の首領日本左右衛門。白浪五人男が江戸城に侵入、家康の御
用金を探しに、奇想天外な物語。

本書より
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日本左右衛門
生まれは遠州浜松在。十四の年から親にはなれ、身のなりわいも白浪の、沖を越
えたる夜働き。盗みはすれど非道はせず。人に情けを掛川から、金谷をかけて宿
々で、義賊と噂高札に、回る配付の盥越し。危なきその身の境涯も、最早二十五
に人間の、定めはわずか五十年。六十余州に隠れもなき。賊徒の首領、日本左右
衛門

弁天小僧菊之助
浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ヶ浜、その白浪の
夜働き、以前を言やあ江ノ島で、年季勤めの児(ちご)ヶ淵、江戸の百味講(ひ
ゃくみ)の蒔銭(まきせん)を、当(あて)に小皿の一文字、百が二百と賽銭の
、くすね銭さえだんだんに、悪事はのぼる上の宮、岩本院で講中の、枕捜しも度
重なり、お手長講と札附に、とうとう島を追い出され、それから若衆の美人局、
ここやかしこの寺島で、小耳に聞いた祖父さんの、似ぬ声色で小ゆすりかたり、
名さえ由縁(ゆかり)の弁天小僧菊之助という小若衆さ

南郷力丸
富士見の間から向こうにみる、大磯小磯小田原かけ、生まれが漁師に波の上、沖
にかかった元船へ、その舟玉の毒賽を、ぽんと打ち込み捨碇(すていかり)、船
丁半の側中(かわじゅう)を引っさらって来る利得(かすり)とり、板子一枚そ
の下は。疑獄と名に呼ぶ暗黒(くらやみ)も、明るくなって度胸がすわり、艪を
押しがりやぶったくり、船足重き刑状(きょうじょう)に、昨日は東今日は西、
居所定めぬ南郷力丸

忠信利平 
続いて次に控えしは月の武蔵の江戸育ち、がきの折りから手癖が悪く、抜け参り
からぐれ出して、旅を小股に西国を、廻って首尾も吉野山、まぶな仕事も大峰に
足をとめたる奈良の京、碁打といって寺々や豪家へ押込み盗んだる、金が御嶽の
罪料は、蹴抜の塔の二重三重、重なる悪事に高飛びし、あとを隠せし判官のお名
前騙りの忠信利平

赤星十三郎
亦その次に連なるは、以前は武家の中小姓、故主のために切り取りも、鈍き刃の
腰越えや。砥上ヶ原に身の錆を研ぎ直しても、抜きかねる、盗み心の深みどり、
柳の都谷七郷、花水橋の切り取りから、今牛若と名も高く、忍ぶ姿も人の目に、
月影ケ谷、神輿ケ獄、今日ぞ命の明け方に、消ゆる間近き星月夜、その名も赤星
十三郎